2000 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンウナギの産卵と回遊に影響を及ほす海洋変動現象に関する研究
Project/Area Number |
11660179
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 伸吾 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (90202043)
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Keywords | ニホンウナギ / 卵・稚仔輸送 / 北赤道海流 / 塩分フロント / エルニーニョ / 地衡流速 / 適水温 |
Research Abstract |
ニホンウナギの産卵時期と一致する6〜7月の東経137度線に沿った30年間の海洋観測データから、幼生の生息環境および輸送環境について解析を行った。解析した範囲の流れは、北赤道反流、北赤道海流、亜熱帯反流から構成され、ニホンウナギの産卵場が位置する北赤道海流の流れは概ね西向きになっており、ウナギの幼生が成育するのに適した水温(19〜28℃)は、上限を水深50m付近とし、下限は低緯度に向かって浅くなる傾向にあった。つまり、幼生の成育に適した水温帯は、北緯20度付近で150m程度、北緯10度付近で70m程度の極めて薄い層に分布していた。経験的直交関数(EOF)を用いた解析によると、エルニーニョ発生年には、表層は全体的に低水温で推移する傾向があるものの、ニホンウナギの産卵場である北赤道海流域では水温にあまり大きな変動は認められなかった。それに対して、北赤道海流域表層の塩分は、エルニーニョにより大きく変化し、通常は北緯15度付近に形成される塩分フロントがエルニーニョ発生年には極端に南下することが分かった。水温と塩分から水深1000mを無流面として上層300mの地衡流速を計算すると、幼生の日齢から計算した幼生が輸送されるべき平均流速(16cm/s程度)を満たす流れは、北緯15度以南の水深200m以浅の海域のみであることが分かった。この海域の流速は、20cm/s程度を平均として経年的に安定しているが、北緯15度よりも北側の海域の流速は極めて弱い。したがって、幼生が北緯15度以北に分布した場合には、幼生の輸送速度が遅くなり、日本沿岸の河川へ遡上するタイミングを逸する可能性があることが分かった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Shingo KIMURA: "Numerical simulation to re solve the issue of downstream migration of the Japanese eel"Marine Ecology Progress Series. 186. 303-306 (1999)
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[Publications] Shingo KIMURA: "Fluctuation indistribution of low-salinity water in the North Equatorial Current and its effecton the larval transport of the Japanese eel"Fisheries Oceanography. 10(印刷中). (2001)