1999 Fiscal Year Annual Research Report
耳石微細構造とDNA塩基配列情報に基づくハモ葉形仔魚の集団構造と加入機構
Project/Area Number |
11660190
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
望岡 典隆 九州大学, 農学部, 助手 (40212261)
|
Keywords | ハモ / レプトケファルス / 耳石微細構造 / ラベリング / ミトコンドリアDNA / アリザリンコンプレクソン |
Research Abstract |
【目的】ハモ(Muraenesox cinereus)は太平洋側では福島県以南、日本海側では新潟県以南の日本各地の沿岸および韓国、中国、東シナ海に広く分布する沿岸漁業の重要魚種である。ハモの漁獲量は1950年代をピークに減少し続け、近年ではその減少傾向は顕著なものとなり、とりわけ、瀬戸内海産ハモの減少は著しく、絶滅の危機にあると言っても過言ではない。このような危機的な状況にあるにも拘わらず、ハモ資源の管理・培養に不可欠である本種初期生活史に関する知見はほとんどない。本研究はまず、ハモ葉形仔魚の耳石微細輪紋の形成リズムを明らかにする。この結果に基づき、加入海域別に日齢や成長履歴を明らかにし、仔魚の加入機構を明らかにすることを目的とする。 【結果】ハモ葉形仔魚の耳石(扁平石)には核を中心に顕著な同心円状の輪紋が25-30本認められ、これらは全て不連続帯(チェック)で構成されていた。8月に延岡湾のイワシシラス網で採集された変態直前のハモ葉形仔魚10個体を70ppmのアリザリンコンプレクソン海水溶液に24時間浸漬し、耳石にタイムマーキングを施し、その後、15日間通常海水で飼育した。ハモ仔魚は飼育中の変態を開始し、実験終了時には全てが変態を完了した。蛍光顕微鏡による観察では全ての個体の耳石に明瞭なピンク色のマークがみられ、飼育中に死亡個体も見られず、70ppmの濃度で適切なラベリングができることが判った。しかし、ピンクの蛍光マークの外側には飼育日数に相当する輪紋より数本少ない輪紋が認められた。変態期に入ると輪紋構造が顕著に変化し、変態期の輪紋は他のウナギ目魚類葉型仔魚の輪紋構造に類似し、この部分では日周輪である可能性が強く示唆された。来年度はさらに若い葉形仔魚を用いて再実験する予定である。来年度に行うmtDNAによる集団構造の解析に備え、本年度に購入したサーマルサイクラー等の備品を用いて、葉形仔魚筋肉からのDNA抽出およびPCRの条件等を検討するために予備実験を行い、実験系のシステムを確立した。
|