2000 Fiscal Year Annual Research Report
慢性的および急性的ストレスが人工種苗ヒラメ稚魚の成長・生残に与える影響
Project/Area Number |
11660195
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
富永 修 福井県立大学, 生物資源学部, 助教授 (90264689)
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Keywords | ヒラメ人工種苗 / ストレス応答 / 致死限界ストレッサー / コルチゾル / ACTH産生細胞 / 血漿中グルコース / ヘマトクリット値 / Na^+ / K^+ATPase活性 |
Research Abstract |
本年度は致死限界の乾出、連続乾出、塩分変化などのストレス刺激を用いて、ヒラメ当歳魚における致死限界のストレス応答について検討した.【実験1:致死限界乾出に対する応答】ヒラメ当歳魚の乾出に対する致死限界を知るため、2・5・10・15・20・30分の乾出刺激に対する生残率を調べた結果,乾出15分で62.7%〜71.4%20分で38%〜24%の生残率となり30分の乾出で全個体が死亡した。そこで,15分の乾出を与えた後の体中コルチゾルの変化を調べたところ,コルチゾル濃度は刺激1時間後に最大となり、24時間後に刺激前の水準まで回復した。この結果は,これまでに報告されてきたコルチゾル濃度の応答と類似した傾向がみられ、致死限界時に特徴的な応答は認められなかった。【実験2:連続刺激に対するストレス応答】実験開始から5日間、毎朝10分の乾出刺激を与えた群と全く刺激を与えなかった群に対して,6日目に15分の乾出刺激を与えた。連日乾出した群の刺激1時間後の体中コルチゾル濃度は日数の経過とともに低下したが、3日目と4日目に乾出をお行なわなかった群は5日目の刺激の後再び上昇した。6日目では連続的に乾出していた群は全て生残したが、刺激を与えていなかった群の生残率は13.3%と非常に低かった。刺激を加えなかった群における生残個体のコルチゾル濃度は1個体を除き低い値を示していたことから,コルチゾルの応答強度とストレス耐性に何らかの関係があることが予想される。脳下垂体前葉のACTH産生細胞を免疫組織染色して観察したが,今回は標本数が少なく連続的ストレスとの関係を考察することができなかった。今後,標本を加えて検討する予定である。【実験3:塩分変化に対するストレス応答実験】全長158mmのヒラメを海水から淡水および高塩分海水に移して生残率および生理学的応答を検討した。対照区、淡水区、高塩分区におけるHt値、血漿中グルコース濃度およびNa^+/K^+ATPase活性に特に顕著な変化は認められなかった。しかし、淡水に順応できなかった瀕死状態の個体では有意に低い血糖量ならびに高いHt値が観察された。
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