1999 Fiscal Year Annual Research Report
広島湾産養殖マガキに付着する紐形動物の毒性と毒成分の諸性状
Project/Area Number |
11660205
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浅川 学 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (60243606)
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Keywords | 広島湾 / マガキ / 紐形動物 / テトロドトキシン |
Research Abstract |
1.広島湾産マガキに付着生息する紐形動物の毒性の季節変動について まず、本実験に用いた紐形動物の同定をその詳細な内部構造の観察などから行ったところ、未記載種であるProcephalothrix sp.であることが判明した。次いで、平成11年4月から広島湾内に垂下されている養殖マガキに付着している本紐形動物を定期的に月2回採取し、10個体の毒性をそれぞれ「食品衛生検査指針」記載のフグ毒定量法により測定した。その結果、平成11年4月から翌年1月にかけて採取した全ての個体が有毒であったが、中にはこれまでになく極めて高い毒性(25,593MU/g)を有する個体も出現した。本種の毒性は、個体によって差が認められるものの、一般に高く、ほぼ1,000〜6,000MU/g(平均値)の範囲内で推移した。一方、カキのむき身に関しては、毒の移行などは認められず、食品衛生上問題はないものと考えられた。 2.広島湾産マガキに付着生息する紐形動物の毒成分について 精製毒をテトロドトキシン(TTX)アナライザーにより分析したところ、TTXが主成分として検出されるとともに、副成分として4epiTTX、anhy TTX及びTTXより若干早く溶出される未同定成分が検出された。次いで、これらの成分の単離精製を試みた。その結果、活性炭処理、Bio-Gel P-2、Bio-Rex 70(H^+)カラムクロマトグラフィーおよび再結晶により、比毒性3,400MU/mgの板状結晶が得られた。この結晶を1%重酢酸に溶かし、^1H-NMRスペクトルを測定したところ、TTXに特徴的なC4a-H(2.21ppm、d、J=9.4Hz)、C4-H(5.36ppm、d、J=9.4Hz)が観測された。さらに、一方を照射すると一方がシングレットになることから互いにカップリングしていることも明らかにされ、本精製毒の主成分がTTXであることが証明された。
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