2001 Fiscal Year Annual Research Report
現代東アジア食糧・農業問題調整システム構築に関する研究
Project/Area Number |
11660211
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
工藤 昭彦 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (00073966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大鎌 邦雄 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (40292255)
冬木 勝仁 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (00229105)
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Keywords | NIES / ASEAN / 中国 / 労働集約型産業 / 直接投資 / 輸出指向工業化 / 東アジア経済危機 / 農業環境問題 |
Research Abstract |
今年度は、研究成果をとりまとめるにあたり、国内関係機関への補足調査、及び昨年度までに収集した資料の整理・分析を行った。その結果、以下のようなことが明らかになった。 NIEsに始りASEANそして中国へと及ぶ急速な工業化と経済成長は、日本をはじめとする先進国の直接投資によるものであり、主要な投資産業である家電、自動車、半導体はいずれも先進国の部品供給に依存する加工組立型であった。それはこれら諸国の先進国に比した比較優位性が低賃金労働にしかなく、労働集約的な加工組立型産業しか定着条件がなかったからであった。 しかし、これらの産業は以下の点で問題をはらんでいた。第一に各国とも伝統的な農業部門に滞留していた過剰労働が低賃金構造の主因であったが、教育水準の低さなどにみられるようにその質は工業生産にとっては不向きであり、一定の雇用拡大が労賃騰貴を招き比較優位性を喪失しやすいと同時に、過剰人口の解消にも限界があったこと、第二に加工組立型産業は付加価値生産性が低く、製品の輸出増加がそれを上回る部品や生産設備の輸入を招き、国際収支の改善に寄与せず、それをカバーしようとした短期・長期の外資導入が、債務を累積させたこと、の2点である。 以上のことから、東アジアにおいて、一時期成功をおさめたかに見えた「輸出指向工業化」による開発戦略は、農工間所得格差にもとづく「農民貧困化」という農業問題を解決するものではなく、さらにその破綻である97年の経済危機以降は、新たに農業環境問題を伴いつつ農業問題を一層深刻化させたことが本研究で明らかにした点である。
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[Publications] 工藤 昭彦: "農業・農村の多様性発揮を支援する政策の枠組"農業と経済. 第68巻第1号. 39-47 (2002)
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[Publications] 工藤 昭彦: "環境適応としての循環型農業経営構築の問題"農業経営研究. 第39巻第4号(印刷中). (2002)
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[Publications] Andi Novianto(研究協力者): "Changing Food Consumption Behavior in Indonesia"東北農業経済研究. 第19巻第2号. 17-26 (2001)
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[Publications] 趙 立洋(研究協力者): "現代中国農業発展の制約要因に関する研究 -食糧増産基地吉林省の分析を中心に-"東北農業経済研究. 第19巻第2号. 37-47 (2001)