2001 Fiscal Year Annual Research Report
中山間地域農業・資源管理への公的支援問題に関する研究―地域農業の再建目標、支援対象の主体と営農行為.およびコスト分担問題をめぐって―
Project/Area Number |
11660212
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Research Institution | IBARAKI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
柏 雅之 茨城大学, 農学部, 助教授 (40204383)
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Keywords | 条件不利地域政策 / 中山間地域 / 地域再生 / パートナーシップ型地域主体 / 2000年共通農業政策改革 / 内発的地域発展 / 直接支払制度 / LEADERプログラム |
Research Abstract |
わが国では中山間地域に対する本格的政策が2000年の直接支払制度を皮切りに始まろうとしている。そこでの問題は、たんに支払制度の単価上昇への要請に止まることなく、それを契機として、いかに新たな地域農業・資源管理システムの再構築を図るかにある。また、定住問題を考える上では、そこでの内発的発展をいかに促進しえるかが大きく問われることとなる。本研究では、こうした方向の模索と共に、それを促進するための地域主体のあり方の解明に大きな比重を置いてきた。そこでは従来の自治体による地域独占的なサービス供給方式から、多様な主体の参加を受け入れ、自治体はその要役を担うといった新たな農村ガバナンス方式の確立が必要ではないかという問題である。 本研究では、わが国中山間地域の多様な農地管理の現場や、民間企業や民間非営利セクターをも取り込んだ農村活性化の現場の実態調査を行ってきた。前者では、特定農地貸付法を活用した都市・農村交流型農地管理、住民出資型農業公社による直接耕作、後者では地場産業や誘致企業による農村活性化事業への参画が対象となった。こうしたなかで、パートナーシップ型地域主体のわが国中山間地域における新たな意義と限界に関する検討を行ってきた。 また、こうした内発型農村発展をパートナーシップ・システムによって行いつつあるのがEUのLEADERや、90年代イギリスの農村開発政策である。本研究では、まずイギリスでの伝統的な条件不利地域直接支払政策の限界を分析した。そののち、上記農村開発の現場を実態調査するとともに、農村社会学会を中心としたパートナーシップ型農村開発の議論をトレースする中で、こうした新たな内発型農村開発政策の意義や限界の検討を行い、そうしたイギリスなどでの経験からわが国中山間地域政策が学びえるものを考察した。イギリスでは、ウェールズ地域などにおけるLEADERの優良事例を分析した。こうしたイギリスでの条件不利地域マネジメント主体の確立施策は、わが国中山間地域の資源管理や活性化を行う際に決定的重要性を果たす地域主体づくりの方向を考えるうえで大きな示唆を与えることが明らかとなった。
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