1999 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカにおける農協による穀物販売の組織と事業方式の研究
Project/Area Number |
11660226
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
磯田 宏 佐賀大学, 経済学部, 助教授 (00193392)
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Keywords | アメリカ農業 / 穀物流通 / 農業協同組合 / アグリビジネス / 垂直的統合 / 農産物流通 |
Research Abstract |
農業・食料産業の構造変化と農政改革のもとでアメリカの農業協同組合が穀物等の共同販売や加工においていかなる組織と事業方式を展開しているかを明らかにするために,本年度は第一に基礎的な統計資料の収集と分析,第二に北西部穀物主産地の代表的地域農協および新世代農協についての現地実態調査を行なった。その結果これまでに明らかになった点は,概要以下のとおりである。 まずアメリカ穀物流通・加工センターでも,農業・食料セクター全体について近年指摘されている「工業化」(industrialization),すなわち垂直的な付加価値諸段階の連鎖からなるセクターの各段階において企業の大型化・少数化の進展,およびそれら諸段階間の結合様式が開放的な価格メカニズムから閉鎖的な管理型・交渉型メカニズムに変化する傾向が確認された。そのため穀物生産者とその協同組合も,単なる原料生産者とその第一次集出荷業者にとどまるのではなく加工等の付加価値過程への進出と流通の垂直的組織化という課題に直面している。 それへのアプローチのひとつが大規模地域農協型で,自らが穀物関連の流通・加工諸分野に展開して多角的,寡占的な垂直統合体に進化し,先行する巨大アグリビジネスと競争せんとするものである。その性格上,穀物生産者にとっての意味は規模経済とマーケットパワーを発揮しうるか否かに規定される。もうひとつは新世代農協型アプローチである。これは農業生産者が直接に出資して加工事業を興し,原料農産物への付加価値をより多く生産者と産地に留保しようとする戦略である。この場合の競争力基盤は出資と農産物出荷を直結した出荷権利株方式におかれ,現実に特産品的商品やニッチ的市場分野では一定の成果を上げていることが判明した。
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