1999 Fiscal Year Annual Research Report
カナダにおける穀物輸出システム再編と小麦ボード改革
Project/Area Number |
11660231
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松原 豊彦 立命館大学, 経済学部, 教授 (50165859)
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Keywords | カナダ / 穀物 / 鉄道輸送 / カナダ小麦ボード / 穀物エレベーター / 物流 |
Research Abstract |
カナダの穀物主産地プレーリー3州からの穀物輸出は、東南に長い物流経路によって行われる。1980年代以降、カナダでは穀物エレベーターの統合化と大型エレベーターへの集荷の集中が急ピッチで進み、物流体系の再編成が進行してきた。なかでも、近年その見直しが大きな議論になっているのが、穀物の鉄道輸送体制である。そこで、本研究では穀物の鉄道輸送に関する歴史的経過と現在の見直し論議の争点を明らかにすることに焦点をしぼり、1999年8月にプレーリー3州において現地調査と資料収集を行った。1995年8月の西部穀物輸送法(WGTA)廃止以降、穀物の鉄道輸送の見直し論議が進行している。とくに、1998年12月のエスティ・コミッション報告は、運賃上限制の撤廃や、カナダ小麦ボードが鉄道輸送に関与することをやめるなど、より商業的・競争的な鉄道輸送に転換することを提言した。この提言の実施について検討したクルーガー委員会報告が1999年10月に公表され、その内容をめぐって生産者団体や穀物業界関係者による議論が続けられている。そこでの主な争点は次のような点である。(1)現行の運賃上限制と距離ベースの運賃体系を続けるのか、それとも輸送経費を反映した運賃体系に変えるのか(この場合は本線と支線で運賃に差をつけることができる)。(2)支線廃止による鉄道輸送の生産性上昇の成果をどう算定し、どのように配分するのか。とりわけ穀物生産者に配分するのか。(3)鉄道輸送におけるカナダ小麦ボードの役割をどう位置づけるのか。現行の貨車配分管理を続けるのか、それとも鉄道会社とエレベーター会社による入札契約に移行するのか。(4)2社による鉄道輸送の独占のもとで、実質的な競争を促すことができるのか否か。(5)支線廃止が農村地域経済や道路の維持管理・補修に及ぼす影響、つまり社会的費用を誰がどのように負担するのか。
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