2000 Fiscal Year Annual Research Report
カナダにおける穀物輸出システム再編と小麦ボード改革
Project/Area Number |
11660231
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松原 豊彦 立命館大学, 経済学部, 教授 (50165859)
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Keywords | 穀物貿易 / 穀物関連産業 / カナダ / 穀物物流 / カナダ小麦局 / 国家貿易企業 |
Research Abstract |
本研究の課題は、世界有数の穀物輸出国カナダにおける穀物輸出システムの急速な構造変化の実態を解明し、それとの関わりで穀物輸出を独占する国家貿易企業カナダ小麦局の改革の背景と影響について検討を加えることである。あわせて、カナダの穀物輸出システムの中で重要な役割を果たしており、近年論議を呼んでいる穀物鉄道輸送問題の経過と最近の政策レビューについても整理し、現在の争点を明らかにする作業に取り組んだ。本研究によって得られた知見を要約すれば次のとおりである。 第1に、穀物輸出市場の変化にともない、主産地の平原諸州から積み出し港までの穀物の物流経路が激変した。太平洋岸のバンクーバーとプリンスルパートからの輸出が大きな比率を占めるようになるとともに、平原諸州から陸路アメリカ合衆国への輸出が増えた。 第2に、穀物輸出を担う穀物関連産業では、農家から穀物を集荷・保管するプライマリー・エレベーターの合理化と統合化が急速に進行した。また、多国籍アグリビジネスがカナダの穀物加工や集荷部門に進出して、北米規模での国境を超えた統合化が進んでいる。 第3に、小麦・大麦の輸出と国内販売を一手に独占してきたカナダ小麦局(CWB)の機構改革である。1999年から穀物生産者へのアカウンタビリティー(説明責任)を明確にするために理事の3分の2を穀物生産者の投票で選出することにした。これによってCWBは連邦政府の公社から「生産者と政府が共同で運営する企業体」へとその性格を変えた。また、同時にCWBは穀物買い付けと販売方式の弾力化にも踏み切っている。とはいえ、CWBは輸出独占の国家貿易企業として中心的な役割を果たしており、いまのところその事業運営に大きな変化はない。
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[Publications] 松原豊彦: "西部カナダの穀物鉄道輸送"カナダ研究年報. 第20号. 1-15 (2000)
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[Publications] 松原豊彦: "カナダの穀物輸出と穀物産業の変貌"輸入食糧協議会報. 第620号. 1-10 (2000)
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[Publications] 松原豊彦: "WTO農業交渉とカナダ小麦局の改革"国家貿易企業調査研究会報告. (予定). (2001)