2000 Fiscal Year Annual Research Report
酸性雨の浸透による土壌塩基類・アルミニウムイオンの溶脱予測に関する研究
Project/Area Number |
11660237
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松川 進 宇都宮大学, 農学部, 教授 (70008069)
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Keywords | 酸性雨 / 硫酸溶液 / pH予測 / 化学平衡式 / ミキシング・セルモデル / 陰イオン吸着 / アルミニウムイオン / 火山灰土壌 |
Research Abstract |
土壌の酸緩衝機能を表す化学平衡式と、土壌中の水分移動を近似的に表すミキシング・セルモデルを用い、pH2,3硫酸溶液が浸透した場合の土壌塩基類とアルミニウムイオンの溶脱予測を試みた。 化学平衡式はアルミニウムの溶解、アルミニウムイオンとの陽イオン交換、炭酸塩平衡、硫酸イオン吸着、電気的中性条件、および硫酸イオンと塩基類の質量保存則より構成した。アルミニウムイオンとの陽イオン交換は、1次鉱物の風化による緩衝機能と共に一括して化学平衡式の中に組み入れた。ミキシング・セルの諸元は溶脱液の硫酸イオンの相対濃度比曲線に、線形吸着を仮定した溶質移動式の解析解を適用して分散長より決定した。 土壌粒子と硫酸溶液との反応は両者の接触表面積に支配されため、2mm以下と0.4mm以下の火山灰土壌の団粒を供試土とした。pH2,3硫酸溶液を粒径の異なる土壌カラムに浸透させ、塩基類の累積溶脱量および硫酸イオンの累積吸着量は、いずれも0.4mm以下団粒土壌が2mm以下団粒を上回った。従って、酸性溶液と土壌の接触の程度を予測式の中に考慮する必要性が示された。 化学平衡式とミキシング・セルモデルを用いた予測手法の中で、土壌粒子と溶液との接触の程度を考慮し、pH2硫酸溶液を浸透させた場合の溶脱液pH測定値と計算結果は良く一致した。 しかし、pH3硫酸溶液浸透時の溶脱液pH測定値と計算値の適合は劣った。pH3硫酸溶液浸透時の硫酸イオン累積吸着量測定値と計算値を比較した結果、計算値が測定値を下回り、pH2に比較し硫酸イオン濃度が1/10と低い場合、硫酸イオンの吸着量を過小評価していることが要因と判断された。硫酸イオン吸着量を水素イオンと硫酸イオン濃度の関数で表わす必要があると推定された。
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