2000 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮における臓器特異的な複合糖質の分布と血小板の反応性
Project/Area Number |
11670019
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
川上 速人 杏林大学, 医学部, 教授 (30146542)
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Keywords | 血管内皮 / 血小板 / 複合糖質 / レクチン / 癌転移 / マウス / 大腸癌 / 組織化学 |
Research Abstract |
血管内皮細胞表面の糖鎖分布は、臓器により微妙に異なることがレクチン組織化学的解析により明らかにされ、癌転移の臓器特異性にも何らかの関与をしている可能性が高い。マウス大腸癌由来の株細胞(colon26)を脾臓に注入して惹起した肝転移において、癌細胞はしばしば血小板の凝集を伴って肝内血管壁に接着し、また癌細胞のECAレクチン染色強度は高肝転移能とパラレルであった。癌細胞表面にあるECA陽性成分は、分子量130kDa糖蛋白を主成分とする複数の糖蛋白質であり、この成分を添加すると、癌細胞と血小板との接着性は有意に抑制された。130kDa糖蛋白質の糖鎖は、tunicamycin前処理により消失することから、N-グリコシド型糖鎖であり、かつα2-6シアル酸や、フコース残基を有していることが明らかとなった。ECA結合糖の主成分とされるラクトサミン糖鎖に、各種のシアル酸やフコースを付加した合成糖鎖を添加して、血小板と癌細胞との接着性を検討すると、フコシルラクトサミン型の糖鎖や分岐型ラクトサミン糖鎖が、血小板と癌細胞との接着を強く阻害することが示された。これらの所見より、ECA陽性のシアリルフコシルラクトサミンを含んだN-グリコシド型糖鎖が、血小板を介した細胞間相互作用に関与していることが考えられる。一方、colon26細胞を尾静脈より注入すると、肝ではなく肺に高頻度に転移巣を形成した。肺転移巣は、ECAによる染色性は弱いもののL-PHAレクチンに強く染色される傾向を示した。このL-PHA陽性成分は、上記ECA結合糖とは異なるポリラクトサミン系のN-グリコシド型糖鎖と推定される。癌細胞と血管内皮細胞との臓器特異的相互作用に、複合糖質と血小板が重要な役割を担っている可能性が指摘される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 平野寛: "レクチン組織化学"電子顕微鏡. 35. 118-119 (2000)
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[Publications] 川上速人: "癌転移-血小板と糖鎖の関与"Melio. 17. 96-99 (2000)
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[Publications] 秋元義弘: "内在性レクチン:ガレクチン-糖鎖情報のメディエーター"Melio. 17. 113-117 (2000)
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[Publications] Hotta: "Detection of disialoganglioside in nat cerebellar cartex by light and election microscopy."Acta Histochem. Cytochem. 33. 281-285 (2000)
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[Publications] 川上速人: "組織細胞化学2000"学際企画. 8 (2000)