1999 Fiscal Year Annual Research Report
酸化的ストレスに対するメラトニンの生体防御機構の解明
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11670025
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
鷲見 和 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (20121197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 正幸 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (10198898)
吉田 稔 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (80081660)
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Keywords | メラトニン / シスプラチン / 酸化的ストレス / ラット / グルタチオン / グルタチオンペルオキシダーゼ / 脂質過酸化物 / 腎障害 |
Research Abstract |
【緒言】 シスプラチン(Cis)は制がん剤として臨床的に広く使用されている薬剤であるが、副作用として重度の腎障害を引き起こす。この腎障害の発生機序はいまだ明らかではないが、その一つに活性酸素種の産生による細胞障害が考えられている。一方、メラトニン(Mel)は生物時計に関与し、種々の生理作用を有する松果体から分泌されるホルモンであるが、活性酸素種の消去作用も有することが明らかとなってきた。そこでMel投与によるシスプラチン誘発腎障害の軽減効果をラットを用いて検討した。 【方法】 雄性Sprague-Dawleyラットを用い、Cisを7mg/kg体重で投与し、3日後および5日後に血中クレアチニン(Cr)および尿素窒素(BUN)値、腎組織中の還元型・酸化型グルタチオン(GSH.GSSG)値、脂質過酸化物量、および抗酸化酸素であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)活性を測定した。Mel投与は25mg/kg体重をCis投与30分前に投与し、連日投与した。 【結果】 Cis単独投与では、3日および5日目で有意に体重減少を起こし、CrおよびBUN値も有意に上昇していた。Mel併用投与でも対照群と比し同様の変化が見られたが、その変化幅はCis単独投与より有意に低かった。腎組織中のGSH、GSSG値はCis単独投与ではともに有意に上昇し、Mel併用投与でもほぼ同様の変化が見られた。しかし、GSH-Px活性はCis単独投与では有意低値を示したが、Mel併用投与では変化なく、またCis単独投与では脂質過酸化物の有意増加を示したが、Mel併用投与では変化なく、Cis単独投与より有意に低値を示した。組織学的所見では、Cis単独投与において尿細管の壊死像が高度に認められたが、Mel併用投与ではその変化が軽度であった。 【考察】 Melの投与によりCis誘発腎障害は明らかに軽減された。この効果は脂質過酸化物の蓄積量の違いから、活性酸素の産生量低下あるいは消去量増加に由来するものと考えられ、GSH-Pxの活性化に関与することが示唆される。
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