2000 Fiscal Year Annual Research Report
小腸絨毛上皮下線維芽細胞の形態変化による細胞間シグナル伝達の制御
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11670031
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Research Institution | National Institute for Phy siological Sciences |
Principal Investigator |
古家 園子 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (20096952)
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Keywords | ギャップ結合 / 小腸絨毛下線維芽細胞 / IP3 / Ca^<2+>波の伝播 / ATP受容体 / 免疫組織化学 / フリーズフラクチャー |
Research Abstract |
小腸絨毛吸収上皮細胞下でギャップ結合を介してネットワークを形成している線維芽細胞は細胞内cAMP濃度に依存してフラットな形から星状へと可逆的に形態変化するが、フラットな形態の細胞にタッチして機械的に刺激すると細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が隣接した細胞に伝播するのに対し(Ca^<2+>波の伝播)、星状の細胞ではCa^<2+>波の伝播が起こらない。細胞間Ca^<2+>波は非興奮性細胞において、1つの細胞で起こった情報をまわりの細胞につたえることにより、反応の同期、情報伝達の制御に関与していると考えられる。本研究の目的は絨毛上皮細胞下線維芽細胞において形態変化による細胞間シグナル伝達の制御機構を細胞および組織のレベルで明らかにする事であった。Ca波の伝播については、ギャップ結合、IP3受容体、ATP受容体等の関与が考えられていたが、本研究の結果、(1)IP3を注入しても、Ca波は誘起できない。(2)ギャップ結合の阻害剤を添加してもCa波の伝播は阻害できない。(3)フラットな形態の細胞と星状の細胞では、免疫組織化学やフリーズフラクチャーでギャップ結合の大きさや数に有意の差がないこと、が明らかになった。これらより、Ca波の伝播にはギャップ結合や細胞内IP3の上昇は直接的にはあまり関与しておらず、ATPの分泌放出およびその受容体が関与していると思われる。これらの結果はアストロサイトにおけるCa^<2+>波の伝播と非常によく似ており、小腸絨毛下線維芽細胞とアストロサイトとの機能の類似性が示唆された。ATP受容体の種類については、抗P2X抗体、抗P2Y4抗体では免疫染色されず、現在in situ hybridization法でATP受容体の種類の同定中である。生体内で小腸絨毛は各方向に動くことが考えられるので、培養繊維芽細胞をシリコンゴムに培養し、引っ張り刺激を加えた所、タッチによる機械的刺激と同様に、フラットな細胞では、Ca^<2+>波の伝播が生じたが、星状細胞では、この現象は起こらなかった。今後は、ATPの分泌放出に、形態変化に伴うアクチンや中間径フィラメントの再構築が、どのように関与しているかを、調べていく。
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