1999 Fiscal Year Annual Research Report
アデノシンのシナプス伝達増強作用における神経膠細胞グルタミン酸輸送担体の関与
Project/Area Number |
11670043
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西崎 知之 神戸大学, 医学部, 講師 (00221474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 正剛 神戸大学, 医学部, 助手 (80243319)
斎藤 尚亮 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 教授 (60178499)
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Keywords | アデノシン / A_<2a>アデノシン受容体 / GLT-1グルタミン酸輸送担体 / 興奮性シナプス後電位 / シナプス伝達促進 / 神経膠細胞 / 海馬 / 卵母細胞膜発現モデル |
Research Abstract |
ラット海馬切片から集合興奮性シナプス後電位を記録し、海馬シナプス伝達に対するアデノシンの効果が調べられた。低濃度アデノシン(【less than or equal】1μM)は海馬シナプス伝達を促進し、その効果は選択的A_<2a>アデノシン受容体アンタゴニストであるDMPXで抑制されたが、選択的A_1アデノシン受容体アンタゴニストである8-CPTでは抑制されなかった。この結果は、アデノシンがA_<2a>アデノシン受容体を介して海馬シナプス伝達を促進することを示唆していた。アデノシンと同様の効果がグルタミン酸輸送担体制剤であるPDCで認められ、PDCの最大効果に対するアデノシンの相乗効果は認められなかった。この結果は、アデノシンによる海馬シナプス伝達促進作用とグルタミン酸輸送担体抑制剤による海馬シナプス伝達促進作用はその作用機序を共有していることを示唆していた。アデノシン、およびPDCは、ラット初代培養海馬神経細胞から記録された微小興奮性シナプス後電流の発現頻度・電流振幅に対して影響がなかった。この結果から、アデノシン、およびPDCの海馬シナプス伝達促進作用はシナプスの前終末からのグルタミン酸放出の増加、あるいはシナプス後細胞の興奮性コンダクタンスの増加によるものではないこと;神経膠細胞の関与、が示唆された。初代培養海馬神経膠細胞においてパッチクランプを施行し、グルタミン酸輸送電流を記録した。その結果、アデノシンがグルタミン酸輸送電流を抑制(グルタミン酸の神経膠細胞への取り込みを阻害)することが判明した。これらの結果を総合すると、アデノシンはA_<2a>アデノシン受容体を介して、グルタミン酸輸送担体によるグルタミン酸の神経膠細胞への取り込みを阻害し、シナプス間隙グルタミン酸濃度が上昇し、海馬シナプス伝達を促進する、という結論に達する。
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