2000 Fiscal Year Annual Research Report
中枢特異的プロスタサイクリンリガンドによる神経細胞死の制御
Project/Area Number |
11670155
|
Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
佐藤 拓己 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第3研究部, 研究員 (10300831)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 正昭 岐阜大学, 工学部・生命工学, 教授 (90093046)
渡辺 恭良 大阪市立大学, 医学部・生理学, 教授 (40144399)
|
Keywords | プロスタサイクリン / プロスタグランジン / 15R-TIC / アポトーシス / 神経細胞死 / 海馬 / 中隔 |
Research Abstract |
プロスタサイクリンは末梢神経系では循環系の制御因子として知られているが、中枢では汎用される安定誘導体であるイロプロストやシカプロストが結合活性がほとんどないこともあり、生理的な役割は謎のままであった。我々は、中枢特異的なプロスタサイクリンリガンドが培養海馬ニューロンにおいて酸化ストレスなどの刺激によるアポトーシスを抑制し、その抑制作用は、中枢特的なプロスタサイクリン受容体への結合活性と相関することを見出した。また個体レベルにおいても、中枢特異的なプロスタサイクリンリガンドはスナネズミにおける前脳虚血によるCA1錐体細胞の神経細胞死やマウス局所脳虚血による神経細胞死を抑制した。これらの実験結果は中枢特異的なプロスタサイクリンリガンドの生理的な役割として、神経細胞の生存維持作用があることが示唆される。さらに海馬ニューロンに投射するコリン作動性ニューロンが含まれる中隔野における神経細胞生存維持作用を検討した。中枢特異的なプロスタサイクリンリガンドである15-deoxy-TICはコリン作動性ニューロンのみではなくそれ以外のニューロンに対しても神経細胞生存維持作用を発揮した。この作用はコリン作動性ニューロンにのみ作用するNGFとは対照的であり、個体レベルの実験においてアミロイドペプチドによる記憶障害作用を抑制することも相まって、新たなタイプのアルツハイマー病治療薬となる可能性がある。またサルやヒトでもポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)を用い、末梢から投与された中枢特異的なプロスタサイクリンリガンドである15R-TICが、その受容体を発現している視床や線条体などへの集積が観察された。これは中枢特異的なプロスタサイクリンリガンドが有効に脳血液関門を通過しうることを示唆する。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] Cui Y.,Kataoka Y.,Satoh T.,Yamagata A.,Shirakawa N.,Watanabe Yu.,Suzuki M.,Kataoka K.and Watanabe Y.: "Protective effects of prostaglansin I2 analogs ischemic delayed neuronal damage in gerbils"Biochem.Biophys.Res.Comm.. 265. 301-304 (1999)
-
[Publications] Satoh T.,Ishikawa Y.,Kataoka Y.,Cui Y.,Yanase H.,Kato K.,Watanabe Yu.,Nakadate K.,Matsumura K.,Hatanaka H.,Kataoka K.,Noyori R.,Suzuki M.and Watanabe Y.: "CNS-specific prostacyclin ligands as neuronal survival-promoting factors in the brain"Eur.J.Neurosci.. 11. 3115-3124 (1999)
-
[Publications] Watanabe Yu.,Matsumura K.,Takechi H.,Kato K.,Morii H.,Bjorkman M.,Langstrom B.,Noyori R.,Suzuki M.and Watanabe Y.: "A novel subtype of prostacyclin receptor in the central nervous system"J.Neurochem.. 72. 2583-2592 (1999)
-
[Publications] Suzuki M.,Kato K.,Watanabe Yu.,Satoh T.,Matsumura K.,Watanabe Y.and Noyori R.: "15-Deoxy-16-(m-tolyl)-17,18,19,20-tetranoisocarbacyclin : a simple TIC derivative with potent anti-apoptotic activity for neuronal cells"J.Chem.Soc.Chem.Comm.. 307-308 (1999)
-
[Publications] Suzuki M.,Doi H.,Kato K.,Bjorkman B.,Watanabe Y.and Noyori R.: "Rapid methylation for a synthesis of a 11C-labeled tolylisocarbacyclin imaging the IP2 receptor in a living human brain"Tetrahedron. 56. 8263-8278 (2000)