1999 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子導入法による滑膜肉腫に関連する変異遺伝子の解析
Project/Area Number |
11670185
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
稲垣 宏 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (30232507)
|
Keywords | 滑膜肉腫 / SYT-SSX遺伝子 / 細胞増殖 / 予後 |
Research Abstract |
滑膜肉腫ではt(X;18)(p11.2;q11.2)転座が90%以上に認められる.この転座により18q11.2に局在するSYT遺伝子とxp11.2に局在するSSX遺伝子とが再配列し,その結果生じたSYT-SSXキメラ遺伝子が滑膜肉腫の腫瘍発生に深く関与している.このキメラ遺伝子の確認は病理補助診断としても有用であり,われわれは高感度RT-PCR法を開発し,病理標本からの滑膜肉腫診断法を広告した.現在,SSX遺伝子は5種類が同定されているが,このなかで転座に関与しているのは,ほとんどがSSX1またはSSX2である.今回われわれは転座するSSX1とSSX2が及ぼす臨床病理学的意義について検討した.手術時遠隔転移を認めない滑膜肉腫患者(19例)を対象にした.腫瘍の病理標本からRNAを抽出し,再構成しているSSX遺伝子の種類を同定した.免疫組織学的にKi67,p27,p53,bc1-2の発現を調べた.そしてSSX遺伝子の種類と臨床データ,予後,組織型,核分裂像,Ki67,p27,p53,bc1-2の発現との間の関連を統計学的に解析した.その結果,SYT-SSX1遺伝子はKi67の高発現と核分裂像の増加とに高い相関を認めたが,その他の因子との相関は明らかではなかった.さらに予後に関与する因子においては,SYT-SSX1,Ki67,核分裂像は無転移生存率の有意な危険因子であった.これらのことから再構成するSSX遺伝子の種類は腫瘍細胞増殖能に関連しており,予後を規定する因子であることが考えられた.これらの結果をふまえ,現在,SYT-SSX遺伝子がどのようなメカニズムで細胞増殖能を高めているか,分子生物学的手法を用いて検討している.
|
Research Products
(1 results)