2000 Fiscal Year Annual Research Report
放射線高感受性マウスを用いた放射線発がんの特性と発がん機構の解析
Project/Area Number |
11670233
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
荻生 俊昭 放射線医学総合研究所, 第3研究グループ, 研究員 (40106183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 義也 放射線医学総合研究所, 第3研究グループ, 研究員 (10201550)
石井 洋子 放射線医学総合研究所, 第3研究グループ, 研究員 (70159672)
辻 秀雄 放射線医学総合研究所, 第3研究グループ, 研究員 (40163795)
西村 まゆみ 放射線医学総合研究所, 第3研究グループ, 研究員 (70218204)
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Keywords | 放射線発がん / C.B-17-Scidマウス / DNA損傷修復能 / DNA-PKcs / C.B-17マウス / 胸腺リンパ腫 / Notch1 / 遺伝子欠失 |
Research Abstract |
突然変異動物として放射線高感受性を示す重症複合免疫不全症マウス(C.B-17-Scidマウス)は、DNA依存性プロティンキナーゼの触媒サブユニット(DNA-PKcs)遺伝子に異常を有し、DNA二重鎖切断に対する修復不全を示す。これまでの実験から、C.B-17Scidマウスでは胸腺リンパ腫の自然発生率が高く、1〜3Gyの放射線を照射すると、ほとんどのマウスが一年以内に胸腺リンパ腫によって死亡すること、一方、Scidマウスの由来した元の系統であるC.B-17マウス(野生型マウス)では、放射線照射による胸腺リンパ腫の発生は低率であることが判った。 これらのマウスに発生した胸腺リンパ腫から培養細胞株を樹立し、それらの細胞を用いてヒトのT細胞リンパ腫発生に係わる癌関連遺伝子約10種類について、変異を調べた。この結果、Notch1遺伝子が高頻度に変異を起こしていることが判った。Notch1遺伝子産物は、細胞膜貫通型の受容体で、細胞間のシグナル伝達に関与している。Notch1を介する経路はWntシグナル伝達系と関連し、細胞の増殖の制御に関わっている。 次にNotch1のプローブを作成し、サザン・ハイブリダイゼーションを行ったところ、幾つかの変異が見つかり、さらにより詳細なゲノム解析を行った。この結果、DNAの欠失、その他、転座、挿入、増幅などの変異が見つかった。特に欠失は、検索したリンパ腫全例で膜貫通ドメインのすぐ外側の欠如として見られた。Scidマウスでは放射線量の増加に伴い欠失が増加する傾向が見られた。一方C.B-17マウス由来の胸腺リンパ腫では、欠失は出現しなかった。以上から、Notch1遺伝子が胸腺リンパ腫の発生に何らかの役割を担っていると考えられた。また、Scidマウスでは放射線によって欠失が起こりやすいことが判明した。
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[Publications] Kobayashi,S.: "Increased sensitivity of scid heterozygous mice to ionizing radiation."Int.J.Radiat.Res.. 72. 537-545 (1997)
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[Publications] Kinebuchi,M.: "Deviated overexpression of TCR-β, TCR-γ, CD-4, and CD-8 on thymic lymphomas induced by 1-propyl-1-nitrosourea."Journal of Immunology. 159. 748-756 (1997)
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[Publications] Watanabe,H.: "Comparison of tumorigenesis between accelerated haevy ion and X-rays in B6C3F1 mice."Journal of Radiation Research. 39. 93-100 (1998)
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[Publications] Nishimura,M.: "Low frequency of ras gene mutation in spontaneous and gamma-ray-induced thymic lymphomas of scid mice."Radiation Research. 151. 142-149 (1999)
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[Publications] Ogiu,T.: "Absence of linkage between radiosensitivity and the predisposing Atp7b gene mutation for heritable hepatitis in the LEC rat."Radiation Research. 154. 113-116 (2000)
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[Publications] Shimada,Y..: "Characteristic association of K-ras gene mutation with loss of heterozygosity in X-ray-induced thymic lymphomas of B6C3F1 mice."Int.J.Radiat.Res.. (印刷中). (2001)
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[Publications] Ogiu,T.: "Comparative Evaluation of Environmental Toxicants (ed.by J.Inaba and Y.Nakamura)"Kodansha Scientific Ltd.,Tokyo. 311 (1998)
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[Publications] Ogiu,T.: "Proceedings of the International Symposium on Biological Effects of Low Dose Radiation (ed.by F.Sato,Y.Yamada,J.Onodera)"Institute of Environmental Sciences, Aomori. 249 (2000)