Trypanosoma cruzi Complexの分子遺伝学的解析

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11670243
• Research Institution: Kyushu University
• Principal Investigator: 肥後 広夫 九州大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (80117225)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 多田 功 九州大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60064531)
• Keywords: シャーガス病 / Trypanosoma cruzi / アイソザイム / 集団遺伝学 / 集団遺伝学 / 遺伝子交換

Research Abstract

著者らはシャーガス病の病型と病原虫Trypanosoma cruziの系統との関連性を調べるため、今までに中米グアテマラを中心とするラテンアメリカ各地から多数の分離株を得、その遺伝的構造を調べてきた。しかし現在までに調べた南米株は20株未満と不十分であった。特に南米では中米では稀な消化管型シャーガス病が分布するため、様々な場所から株を得てその遺伝的構造を比較検討することが必要である。また著者らはすでに集団遺伝学的解析により、グアテマラ集団に遺伝子交換がみられることを報告しているが、これが南米にも存在するのかはあきらかでない。
今回南米エクアドル、ペルー、ブラジル、ボリビア、パラグアイおよび北米メキシコの主としてヒトから得られた分離株23株について、アイソザイム分析をおこなった。現在まで得られたアイソザイムパターンからいくつかの新知見が判明した。メキシコ株はGroup 1に属するグアテマラ株と非常に似ており、北米、中米は比較的変異のすくない一つの系統集団を形成するものと思われた。またペルー株は基本的にGroup 1 に属していたが南米に特有な系統であるGroup 3の遺伝子も含んでおり、南米系統の影響を受けていた。ブラジルおよびパラグアイ株はほぼGroup 3であった。このように南米内のT.cruziの遺伝的構造は地理的変移を示し、南米北部ではGroup 1の遺伝子が主流を占めるが、南米中南部ではGroup 3遺伝子が主流になる。ボリビア株およびパラグアイ株の一部はGroup 2とGroup 3のハイブリットのパターンを示す遺伝子座がみられ変異を示しており、遺伝子交換の可能性が示唆された。現在さらに多数の南米株をアイソザイムで分析中であり、またRAPDによるDNAの分析も進行中である。

Research Products

• [Publications] H. Higo, T. Yanagi, V. Matta, T. Agatsuma, H. Kanbara, I. Tada, M. P. Deleon et al.: "Genetic structure of Trypanosoma cruzi in Central America and comparison with South American strains"International Journal for Parasitology. 27・11. 1369-1374 (1997)
• [Publications] H. Higo, T. Yanagi, V. Matta, T. Aatatsuma, A. Cruzu-Reyes, N. Uyema, C. Monroy et al.: "The differences of genetic structure of Trypanosma cruzi isolates from central and South Americas(2)"Parasitology International. 47・Supple. 285 (1998)
• [Publications] H. Higo, S. Miura, I. Mimori, M. Horio, T. Agatsuma, N. Uyema, T. Yanagi et al.: "Genetic variation among Trypanosome cruzi isolates in Central and South America"Parasitology International. 49・Supple. 54 (2000)