2000 Fiscal Year Annual Research Report
芽殖孤虫の種の決定を主眼においた裂頭条虫科条虫の分子系統
Project/Area Number |
11670256
|
Research Institution | National Science Museum, Tokyo |
Principal Investigator |
倉持 利明 国立科学博物館, 動物研究部, 主任研究官 (80277590)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北 潔 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90134444)
|
Keywords | 芽殖孤虫 / 裂頭条虫科 / 海産哺乳類 / PCR / COI / NDIII / 分子系統 |
Research Abstract |
芽殖孤虫とは裂頭条虫科に属すると考えられる幼条虫(プレロセルコイド)に対して与えられた名称であり、その成虫および固有宿主は知られていない。本研究はこれらの解明を最終目的に、遺伝子解析の手法による芽殖孤虫と他の裂頭条虫科条虫との系統類縁関係を解析した。裂頭条虫科は海洋において著しい種分化を遂げていることから、本研究では海産哺乳類由来の裂頭条虫に着眼し、芽殖孤虫を含む本科条虫の分子系統樹構築を試みた。 平成12年度は昨年度に引き続き鯨類の漂着調査を実施し(5件6例:ミンククジラ、ユメゴンドウ、オガワコマッコウ、オウギハクジラ)、これら野外調査を通して裂頭条虫の収集につとめると共に、国立科学博物館に保管されていた標本を合わせて解析に用いた。虫体から全DNAを抽出し、PCRによるホモロジープロービングを行い、ミトコンドリアDNAにコードされたNADH脱水素酵素サブユニットIII(NDIII)遺伝子の全配列、シトクロームc酸化酵素サブユニットI(COI)遺伝子のほぼ全配列、およびプロリン、イソロイシン、リシン、トリプトファンtRNA遺伝子を含む、合計約2kbpのPCR産物の配列を決定した。得られた配列の相同性をそれぞれ検討し、近隣結合法等により系統樹を構築したところ、芽殖孤虫は陸生哺乳類の裂頭条虫であるマンソン裂頭条虫、次いで人体寄生種として知られる海産種、日本海裂頭条虫との強い類縁性を示し、鯨類由来の鯨複殖門条虫等とは異なったクラスターに配置され、さらに海産哺乳類由来の裂頭条虫は互いにきわめて近縁であることが示された。
|
Research Products
(1 results)