2000 Fiscal Year Annual Research Report
サルモネラ菌のマクロファージ内増殖に関わる新しいビルレンス遺伝子とそのメカニズム
Project/Area Number |
11670277
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
打矢 惠一 名城大学, 薬学部, 助手 (70168714)
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Keywords | サルモネラ菌 / ビルレンス遺伝子 / 発現制御 / マクロファージ / 殺菌抵抗性 / IL-10 |
Research Abstract |
Salmonella enterica serovar Typhimurium(S.Typhimurium)のSalmonella Pathogenicity Island 2(SPI-2)内に同定したマクロファージ(Mφ)の殺菌抵抗性に関与する新規遺伝子、spiCの機能解析と発現制御機構について平成12年度の研究実施計画に従って調べた結果、以下のような新たな知見が得られた。 1.spiC遺伝子の発現制御機構の解析:(1)spiCの発現はSPI-2に存在する二成分制御系の調節遺伝子、ssrA/ssrBに加えて、phoP/phoQシステムによっても正に調節されていた。(2)spiCの発現は、対数増殖期後期から定常期で見られた。さらに、RpoS(シグマファクター)によってもその発現は正に調節されていた。(3)N-minimal mediumを用いて調べた結果、Mφのファゴソーム内のような低Mg^<2+>(10μM)や低pH(5.0)の条件でspiC発現の増強が見られた。(4)spiCの領域にlacZ遺伝子を挿入したキメラを作成してMφに感染後、spiCの発現を調べた結果、経過時間とともに発現の増強が見られた。 2.SpiC蛋白の機能解析:SpiCがMφの殺菌抵抗性に関与し、その機構がファゴソームとライソゾーム(P/L)の融合の阻止であることをすでに報告したが、分子レベルでの機能は不明である。そこで、Differential display解析を行いSpiCにより発現に影響を受けるMφ側の遺伝子を調べた結果、親株感染MφにおいてInterleukin-10(IL-10)の発現がspiC欠損変異株に比べて著しく高いことを見出した。さらに、サルモネラ感染マウスの脾臓中のIL-10産生量にもSpiCは影響を与えた。IL-10がMφの機能を抑制するとの報告があることから、過剰に産生されたIL-10により結果的にサルモネラ感染MφにおいてP/L融合が阻止され、サルモネラが細胞内で増殖可能な環境になるものと考えられ、今後それらについて詳しく調べる。さらに、IL-10転写の活性化のメカニズムを解明することにより、SpiCの標的となる分子の同定を行いたいと考える。
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