1999 Fiscal Year Annual Research Report
マウス腸管粘液に含まれるコレラ菌エルトール溶血毒阻害因子の研究
Project/Area Number |
11670282
|
Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
生貝 初 鈴鹿工業高等専門学校, 生物応用化学科, 助教授 (60184389)
|
Keywords | コレラ菌 / エルトール溶血毒 / マウス腸管粘膜 / 溶血阻害因子 / 膜傷害 / 集合体 / コレステロール / 蛋白分解酵素 |
Research Abstract |
コレラ菌エルトール溶血毒(65kDa;ETH)は細胞膜中に260kDaの孔状集合体を形成して溶血や細胞溶解を引き起こす。研究代表者はマウス腸管粘液(MSIM)がETHによる溶血作用を阻害することを見出し,この作用を解明するためにMSIMに含まれるETH阻害因子について研究した。ETHと結合するMSlM成分を調べたところ,コレステロールはETHと結合し,更にETHによる溶血も抑制したので阻害物質と考えられた。しかしながらMSIMを95℃で加熱すると阻害活性の大部分が失われるので易熱性物質による作用も考えられた。赤血球の代わりにリポソームをETHとMSIMと共に混合し,ETHの集合体形成を電気泳動で経時的に調べた。混合直後はETHが検出できなかったが,15分以上培養すると約260kDaから200kDaの間にラダー状のETH集合体がゲル上に出現した。60分培養するとこれらの集合体は消失し,新たに200kDaの集合体が出現した。試料を混合した直後にETHが検出できなかった原因はMSIMの作用によって形成された集合体がゲル上でラダー状に泳動され,染色による検出限界を超えたためと考えられた。またMSIMを加えた直後から溶血阻害と集合体形成がみられ,両者の間に相関性があるように思われた。60分の培養で出現したETH集合体(200kDa)と同一サイズの集合体は260kDaのETH集合体をトリプシンで処理しても生じる。そこでトリプシンをETHとリポソームに混ぜたところ,MSIMと同じ結果が得られた。一方,リポソーム非存在下ではトリプシンによるETH単量体の分解が徐々に進行し,集合体は形成されなかった。以上の結果から,MSIMに含まれるコレステロールならびに蛋白分解酵素がそれぞれETHの溶血作用を阻害する因子として働き,特に後者は200kDaの集合体形成の誘導が原因として考えられた。
|