2000 Fiscal Year Annual Research Report
マウス腸管粘液に含まれるコレラ菌エルトール溶血毒阻害因子の研究
Project/Area Number |
11670282
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
生貝 初 鈴鹿工業高等専門学校, 生物応用化学科, 助教授 (60184389)
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Keywords | コレラ菌 / エルトール溶血毒 / 細胞溶解 / マウス腸管粘液 / 溶血阻害因子 / 蛋白分解酵素 / 集合体 |
Research Abstract |
コレラ菌エルトール溶血毒(65kDa;ETH)が引き起こす細胞溶解作用の1つである赤血球溶血作用をマウス腸管粘液(MSIM)は著しく阻害する。本年度は,阻害因子の同定と作用機構の解明を行った。 (1)MSIMに含まれる阻害因子の同定と分離…系統の異なる3種類のマウス(C3H/HeN,C57BL/6,BALB/c)のMSIMは全てETHの溶血作用を阻害する活性を持つことが分かった。さらに(3)で述べるように阻害因子として腸管内に存在するトリプシンとα-キモトリプシンが考えられた。 (2)ETHのマウス腸管内での作用と集合体化…In vitroの実験では65kDaのETHは単一の集合体のみを形成するが,マウス(C57BL/6)の小腸にETHを投与し,経時的にETHを検出したところ,ETHを腸管内に投与した直後から,200kDaから300kDaの分子量の異なる集合体群が形成されていることが明らかとなった。 (3)蛋白分解酵素のETHに対する作用とETHの集合体形成の関係…阻害因子の可能性があるトリプシンとα-キモトリプシンのETHに対する蛋白分解作用を調べた。その結果,65kDaのETHは限定分解し,新しく50kDaの毒素分子が生成された。限定分解が進行中で65kDaと50kDaのETHが共存している時,リポソームを加えると,65kDaと50kDaのETHのco-aggregateと思われる分子量の異なる集合体が200kDa〜300kDaの間で多数形成された。さらに分解が進み50kDaのETHが主になると,集合体が形成されにくい傾向がみられた。また,トリプシンやα-キモトリプシンで処理したETHの溶血活性は処理前に比べて減少することが分かった。したがって,50kDaの毒素分子の生成はETHの溶血活性を減弱する原因の1つとして考えられた。
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