2000 Fiscal Year Annual Research Report
21世紀に向けての経粘膜ワクチン:経鼻ワクチンの病理
Project/Area Number |
11670294
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣井 隆親 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (80228824)
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Keywords | 粘膜免疫 / IgA / B-1細胞 / ワクチン / IL-15 / IL-15R |
Research Abstract |
前年度、鼻粘膜固有層においてIgA抗体産生細胞にはB-1細胞ならびにB-2細胞から由来する2種類のB細胞が存在することを明らかにした。そしてこのB-1細胞は、T細胞が産生するIL-5によって増殖・分化することが明らかとなった。しかしながら、T細胞欠損マウスすなわちヌードマウスにおいても粘膜面においてIgA産生が認められることから、T細胞以外の細胞から産生される何らかの液性因子が粘膜面に存在するB細胞に影響があると考えられる。本年度は、これらの液性因子の検索を行った。 粘膜上皮細胞から産生されるサイトカインは、IL-7、SCFなどリンパ球系に増殖因子として作用しているが、B-1細胞ならびにB-2細胞に分離した細胞と共に培養した結果、大きな変化は認められなかった。これは、IL-7、SCFなどの液性因子がB細胞の分化初期に必要であるというこれまでの報告と類似していた。そこで感染粘膜上皮より産生されるIL-15において同様の増殖実験を行ったところ、B-2細胞と比較してB-1細胞は有意に増殖することを認めた。さらに以前報告したB-1細胞増殖因子であるIL-5との共培養において相乗効果を認めた。これらの結果は、以前より粘膜面に多く存在することが知られているB-1細胞がB-2細胞と違った増殖・分化因子によって制御されていることを示している。さらにIL-15におけるIgA産生能をB-1細胞ならびにB-2細胞において検討したところ、B-2細胞と比較してB-1細胞にはIL-15に依存した強い抗体産性能が認められた。実際にIL-15をマウスに週3回、2週間投与したところ血清中のIgA抗体量には変化が認められなかったが、粘膜分泌物である糞便や唾液中におけるIgA生産量は有意に上昇した。さらに、IL-15に対する中和抗体を週1回、3週間投与した場合粘膜分泌中の抗体産生量は投与しない場合と比較して明らかにIgA産生量が減少した。またこのマウスの粘膜面における細胞分画をFACSで解析したところ、IgA産生量に依存して粘膜面の表面IgA陽性B-1細胞の割合が変化した。すなわち粘膜面におけるIgA抗体産生はその多くがB-1細胞に依存し、これまで知られているIL-5のみならずT細胞以外から産生されるIL-15が重要な働きを担っていることがあきらかとなった。今後の研究課題としてB-1細胞ならびにB-2細胞から産生される抗体の特徴に各種抗原に対しての違いがあるのかなどを踏まえて解析をしなければならない。またこれらの結果を基にして、今後はB-1細胞の特性を生かした経鼻ワクチンの効果的な開発を考慮しなければならない。
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[Publications] Hiroi,T., et al.: "Deticiency of IL-5 receptor a chain selectively influences on the development of the common mucosal immune system independent IgA producing B-1 cells in mucosal-associated tissues."J.Immunol.. 162. 821-828 (1999)
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[Publications] Yanagita,M.,Hiroi,T. et al.: "Nasopharyngeal-associated lymphreticular tissue (NALT) immunity : fimbriae-specitic Th1 and Th2 cell-regulated IgA responses for the inhibition of bacterial attachment to epithelial cells and subsequent in flammatory cytokine production."J.Immunol.. 162. 3559-3565 (1999)
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[Publications] Saitoh-Inagawa,W.,Hiroi,T. et al.: "Unique characteristics of lacrimal glands as a part of mucosal immune network : high frequency of IgA-commited B-1 cells and NK1.1^+αβ T cells"IOVS. 41. 138-144 (2000)
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[Publications] Hiroi,T. et al.: "IL-15 and IL-15 receptor selectively regulate differentiation of common mucosal immune system-independent B-1 cells for IgA responses"J.Immunol.. 165. 4329-4337 (2000)
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[Publications] 廣井隆親 他: "新しい粘膜免疫誘導システムの存在:腸管におけるB-1細胞からのIgA産生"Annual Review免疫2001. 20-27 (2000)
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[Publications] 廣井隆親 他: "CMIS独立型B-1細胞によるIgA誘導系の存在"アレルギー・免疫. 7-12. 50-58 (2000)