Research Abstract |
自動車交通量の多い幹線道路沿道に位置する小学校の4年生のうち,保護者の承諾が得られたものを対象に,ピークフローおよび1秒量の自己測定,血清総IgE,ダニ特異的IgE抗体の測定を行った。肺機能測定は,各校ごとに22日間,起床時と就寝前に実施し,検査前72時間平均の大気汚染物質濃度との関連を検討した。 ピークフロー1秒量の自己測定は175名,採血は168名について実施し,両者の結果が得られたのは146名である。ピークフロー値と二酸化窒素(NO_2)の検査前72時間平均濃度との関連は,起床時11名,就寝前5名で有意な負の相関が認められ,大気汚染レベルの増加により肺機能値が低下することが示された。浮遊粒子状物質(SPM)濃度との関連は,起床時11名,就寝前4名で有意な負の相関が認められた。1秒量は,NO_2濃度との間に起床時10名,就寝前6名,SPM濃度との間に起床時10名,就寝前8名で有意な負の相関が認められた。 喘息・喘鳴症状を有するものは51名であり,このうち起床時の肺機能値がNO_2濃度の増加により有意に低下したものは21.6%,SPM濃度の増加により有意に低下したものは19.6%であり,症状のないもの(それぞれ8.1%,8.9%)に比して有意に高率であった。また,血清総IgE高値のもの,ダニ特異的IgE抗体陽性のものも,起床時の肺機能値が大気汚染レベルの増加により有意に低下するものの割合が高かった。就寝前の肺機能値の変化と喘息・喘鳴症状の有無,血清lgE値との関連は認められなかった。 以上より,喘息・喘鳴症状を有するもの,血清lgE高値のものは自動車排出ガス由来の大気汚染物質への曝露により気道閉塞が起こりやすいことが示唆された。対象数を増やすとともに,これらの変化とアレルギー素因,気道過敏性との関連を検討する予定である。
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