Research Abstract |
平成11,12年度に引きつづき,千葉県内の自動車交通量の多い地区に位置する小学校の4年生のうち,保護者の承諾が得られたものを対象に,ピークフローおよび1秒量の自己測定とともに,血清総IgE,ダニ特異的IgE抗体の測定,さらに血清中の好酸球由来蛋白であるECP,EDNの測定を行った。肺機能測定は,学校ごとに21〜23日間,起床時と就寝前に自己測定を実施し,検査前72時間平均の大気中浮遊粒子状物質(SPM)及び二酸化窒素(NO_2)濃度との関連を検討した。 3年間合わせて,ピークフロー・1秒量の自己測定は549名,採血は580名について実施し,両者の結果が得られたものは480名である。SPMの検査前72時間平均濃度とピークフロー値との関連は,起床時23名,就寝前26名で有意な負の相関,1秒量とは起床時22名,就寝前17名で有意な負の相関が認められ,大気汚染濃度の増加により肺機能値が低下することが示された。NO_2濃度とピークフロー値との関連は起床時22名,就寝前18名,1秒量とは起床時19名,就寝前18名で有意な負の相関が認められた。 特に,喘息・喘鳴症状を有するもの,血清総IgE高値のもの,ダニ特異的IgE抗体陽性のものは,起床時の肺機能値が大気汚染レベルの増加により有意に低下するものの割合が高かった。喘息・喘鳴症状がなく血清IgEまたはEDNが高値のものは大気中NO_2濃度の増加により就寝前の肺機能値が有意に低下するものが高率であった。 以上より,喘息・喘鳴症状を有するもの,血清IgE,EDNが高値のものは自動車排出ガス由来の大気汚染物質であるSPM及びNO_2への曝露により気道閉塞が起こりやすいことが明らかとなり,気道過敏性に影響を与える可能性が示唆された。
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