Research Abstract |
男性生殖器機能への影響に関する疫学研究は古くから報告されているが,1992年にBMJに掲載されたCarlsen,Skakkebaekらによる論文によって,最近50年間でのsemen qualityの低下ならびにその低下に対する内分泌かく乱化学物質の関与の可能性が広く認識されるに至った.しかし,必ずしもすべての報告がsemen qualityの低下を示しているわけではなく,変わっていないとする報告も少なくない.その理由として,疫学研究としてみた場合のデザイン上の問題をはじめとして,多くの要因が関与していると考えられる. そこで,本年は,上記のCarlsenの論文とそれ以降に公表・掲載された学術論文を広く収集し,疫学的視点からcritical reviewを行い,semen qualityの時間的変化に対するevidenceとしての評価を行った.ここでは,MEDLINE上でCarlsenらと同じキーワードを用いた文献検索を行い,ヒットした文献からsemen qualityの時間的変化を検討した文献約10編を選んで評価した.評価は,目的,対象集団,研究デザイン,結果の指標,曝露の指標,測定方法,Selection biasの可能性,Observation biasの可能性,Random errorの可能性,Confounding factorへのデザイン上の考慮と統計学的手法,主たる結果,著者による考察,結果に対するbias・交絡因子の寄与,外部妥当性あるいはその他のコメント,の各項目ごとに行った.その結果,semen qualityの変化には,時間的要因に加え,地理的要因,季節変動,測定のばらつき,が大きく影響することが明らかとなった.従って,一般集団としてのsemen qualityの変化については,未だに十分な疫学的なevidenceが蓄積されているとはいえないと考えられる.
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