断続的寒冷曝露による身体冷却がもたらす生体負担の労働生理学的解析

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11670359
• Research Institution: National Institute of Industrial Health
• Principal Investigator: 澤田 晋一 独立行政法人産業医学総合研究所, 企画調整部, 研究調整官 (00167438)
• Keywords: 寒冷作業 / 寒冷血管拡張反応(CIVD) / 凍傷 / 高齢者 / 防寒服 / ISO / 特許 / マレーシア

Research Abstract

断続的寒冷曝露がもたらす身体冷却の特徴と問題点を明らかにするために、昨年度まで健康な成人男性を対象に休憩・休止条件をはさんで手指と全身を断続的に冷却する実験を行い、かつ寒冷作業の現場実態調査を進めてきた。今年度はこれに若干の調査や実験を追加したが、研究実施期間の最終年度にあたるため研究活動の大半はこれまでに得られた結果の総括と学会等での発表が中心となった。今年度の主な研究活動の実績を以下に要約する。
(1)スウェーデン国立労働生活研究所(NIWL)と産業医学総合研究所との研究協力の一環として開催された第一回研究交流会(ストックホルム)に出席した。また国際労働衛生会議ICOH2003(ブラジル)で防護服のシンポジウムを組織した。いずれの会議においても、日本の寒冷作業の実態と作業者(冷凍庫作業者,冬季屋外電気作業者,食品加工業者)が経験的に使用している防寒服の問題点について断続的寒冷曝露の観点から講演し、作業者の主観的判断に依存しない合理的な作業管理手法を確立することの必要性を強調した。
(2)マレーシア国立労働安全衛生研究所への技術協力の一環としてマレーシアの寒冷作業の現場実態調査(冷凍冷蔵食品工場)を行い、熱帯地域の寒冷作業者の寒冷作業負担の問題点を検討した。
(3)ISO国際温熱委員会(福岡)に出席し,現在審議中の国際規格原案について議論した。特に寒冷作業者の健康チェックリストと、車両室内の温熱環境における主観的負担評価法における不十分な項目について本研究で得られた結果を参考にしつつ改善案を提案した。
(4)高年齢労働者の凍傷抵抗反応の特性を評価するために寒冷血管拡張反応(CIVD)を指標にした局所冷却試験法を検討し、高齢者にとって安全でかつ負担が少ない寒冷負荷条件を考察した。本法を用いることにより、高年齢者では寒冷血管拡張反応強度の低下や発現時間の遅延とともに冷却負荷後の回復速度が大幅に低下することを明らかにした。
(5)寒冷曝露負担の生理的評価指標の方法論を二つ考案した。第一の方法論は、深部体温計測法であり、第二の方法論は生体表面からの微量水分蒸散量の測定システムである。いずれも近い将来に特許申請を計画している。
以上の今年度の研究活動の成果にそれ以前の研究成果を加えて最終報告書をまとめた。

Research Products

• [Publications] Shin-ichi Sawada: "Cold-induced vasodilatation response and associated thermal loads in older men observed during a finger cooling"Environmental Ergonomics X (Papers from The 10th International Conference on Environmental Ergonomics). 219-222 (2002)
• [Publications] Shin-ichi Sawada, Naomi Hisanaga, et al.: "Report on cold stress field survey among food processing workers"National Institute of Occupational Safety and Health, Malaysia. 1-30 (2002)
• [Publications] 澤田晋一: "繰り返し手指冷却時の凍傷抵抗反応と主観的負担に及ぼす着衣量の影響"日本生理人類学会誌. Vol.7(1). 64-65 (2002)
• [Publications] 澤田晋一: "暑熱・寒冷ストレスの健康影響と予防対策"港湾災防. 449. 8-12 (2002)
• [Publications] Shin-ichi Sawada, et al.: "Thermoregulatory Characteristics an Thermal Loads Observed during Alternately Repeated Exposure to Cold and Warm Environments"Ventilation 2003 (Papers from the International Symposium on Ventilation for Contaminant Control). (in press). 1-6 (2003)
• [Publications] 澤田晋一: "人間工学ISO/JIS規格便覧2002(日本人間工学会ISO/TC159(人間工学) 国内対策委員会編)"日本人間工学会、東京. 80(56-57,62-63) (2002)