2001 Fiscal Year Annual Research Report
凍死の診断根拠としてのアミロイド前駆タンパクの動態
Project/Area Number |
11670430
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health |
Principal Investigator |
笠井 謙多郎 産業医科大学, 医学部, 助手 (40169397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 宣幸 産業医科大学, 医学部, 教授 (60126597)
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Keywords | APP / Myloid precursor protein / Dath from cold / アミロイド前駆タンパク / 凍死 / 外因死 / ストレス |
Research Abstract |
平成13年度研究計画に従い,法医解剖51例の脳(大脳皮質,海馬,小脳および延髄)からアミロイド前駆タンパク質(APP)の抽出を行い,死因との関係について検討した。本研究の主な目的である凍死例は1例しかなく,研究の中心を他の外因死例とAPPとのそれに変更した。 APPは2種類((1):10mM Tris-HCl pH7.6,0.1mM EDTA,1mM PMSF,0.32M Sucrose,(2):8M Urea,4%CHAPS,40mM Tris,0.2% Biolyte^<TM>3-10)のBufferで抽出した。Buffer(1)と脳の各分画をホモジネートし遠心により得られた上清(上清(1))を除き,沈査にBuffer(2)を加えて撹拌溶解した後,再び遠心して得られた上清(上清(2))をそれぞれ測定試料とした。APPの測定はELISA法により行い,各上清より得られたAPPの比(上清(1)/上清(2))を用いて,死因との関係について検討した。 窒息事例の小脳および延髄では,APPの比は内因死=頚部圧迫<鼻口腔閉鎖<異物吸飲=溺死<酸素欠乏の順で変化した。開放性の損傷を伴う事例では,内因死=外傷性ショック<出血性ショック<失血の順でAPPの比が高くなる傾向にあった。しかし,大脳皮質および海馬ではこれらの差は認められなかった。覚醒剤による中毒死例では,海馬および小脳では内因死例よりも低い値を示したが,延髄では事例によってばらつく傾向にあった。凍死事例では,ラットによる凍死モデルにおける結果と同様に,特に大脳皮質で高い値を示し,他の外因死例におけるAPPの比の変動が小脳または延髄を中心として出現していることと考え併せ,凍死の診断に大脳皮質におけるAPPの比を利用できる可能性を示した。また,窒息事例および頭部外傷を除く外傷による死亡例では,小脳および延髄におけるAPPの比の変動は,障害発生から死に至るまでの時間と時間とよく比例する傾向にあり,法医診断学上有用な所見と考えられた。
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