1999 Fiscal Year Annual Research Report
日本人に固有な肝グルクロン酸転移酵素多型に起因する薬剤の副作用に関する研究
Project/Area Number |
11670494
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
佐藤 浩 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90090430)
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Keywords | グルクロン酸転移酵素 / 遺伝子 / 多型 / 薬剤 / 副作用 |
Research Abstract |
ギルバート症候群の患者に抗癌剤の一種であるイリノテカンを投与すると、強い副作用(難治性重症下痢)が出現したとの報告があった。続いて、イリノテカンの活性代謝物であるSN-38が、UDP-グルクロン酸転位酵素1A1(UGT1A1)によって代謝されるとの報告が発表された。以上より、イリノテカンの活性代謝物であるSN-38は、グルクロン酸抱合を受け不活化された後、胆汁中に排泄されるが、UDP-グルクロン酸転位酵素1A1の活性が低下しているギルバート症候群の患者では、SN-38は不活化されないまま胆汁中に排泄され、腸粘膜を障害し、難治性重症下痢を引き起こすのではないかと考えられた。 正常の遺伝子組み換えUDP-グルクロン酸転位酵素(UGT)のうち2種類のアイソフォーム(UGT1A1、UGT1A6)を用いて、SN-38に対するグルクロン酸抱合活性を調べた。しかし、いずれもSN-38のグルクロン酸抱合体は、検出されなかった。最近、UGTの各アイソフォームについて、SN-38を基質としたグルクロン酸抱合活性を調べた研究結果が報告された。それによると、UGT1A7の活性が最も強く、他のアイソフォームでは、その約20分の1程度の活性しか認められていない。従って、SN-38のグルクロン酸抱合に特異的に関与しているのは、UGT1A7と考えられ、我々の実験結果とも矛盾しない。今後、UGT1A7を用いたSN-38に対するグルクロン酸抱合活性を調べる予定である。
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