1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクターピロリのヘムオキシゲナーゼ活性とヘム鉄要求性胃粘膜傷害機構の研究
Project/Area Number |
11670531
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 秀和 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70255454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 博司 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (00146599)
末松 誠 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (00206385)
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Keywords | H.pylori / 酸化ストレス / 鉄 / モノクロラミン / 亜鉛 / スナネズミ / アポトーシス / 活性酸素 |
Research Abstract |
胃低分化型腺癌由来の上皮細胞株(MKN45)をもちいて、細胞形態を蛍光顕微鏡にて観察し、蛍光色素rhodamine123の負荷にてミトコンドリア内膜電位差の変化を検討したところ、モノクロラミン負荷により、rhodamine123蛍光強度は、著しく減少した。このときに、細胞を採取し、細胞分画法にてミトコンドリア分画とサイトゾル分画に分離し、各分画におけるcytochrome cをWestem blottingにて検討した。通常では、ミトコンドリア分画に存在するはずのシトクロムcはモノクロラミン負荷により、サイトゾル分画に漏出しており、いわゆるmitochondrial permeability transition(MPT)が起こったものと考えられた。また、サイトゾル分画でのアポトーシス関連酵素として、caspase-3とcaspase-1活性を蛍光基質を負荷した後の蛍光強度で測定したが、caspase-3活性は上昇したが、caspase-1活性は変化しなかった。つまり、本アポトーシスの経路は、caspase-1は経由せず、caspase-3を活性化すると考えられた。また、caspase-3の基質となるPARPの切断、さらにラダー検出と細胞質内オリゴヌクレオソーム量の亢進も、モノクロラミンにより生じた。亜鉛のキレート化合物であり、胃粘膜内鉄代謝にも影響を与えるとも考えられるポラプレジンクは、DNA断片化を抑制した。一方、生体内では、モノクロラミンをはじめとするH.pylori由来の傷害因子によって惹起されるアポトーシスの異常亢進によってもヘム鉄が確保される。最近、細菌がへム鉄を再利用するための独自のヘムオキシゲナーゼ系を持つことが明らかとなったが、H.pyloriにおいて本酵素は認められていない。つまり、本菌の感染により、ヘム鉄の効率的な代謝は起こりにくく、むしろ、鉄依存性の酸化ストレスが起こりやすくなると考えられた。本研究では、マウスや胃癌発生の報告もあるスナネズミのH.pylori感染モデルでの酸化的ストレスと細胞傷害について比較検討した。つまり、白血球浸潤(ミエロペルオキシダーゼ活性)、上皮のアポトーシス(細胞質内オリゴヌクレオソーム量とTUNELによる組織科学的観察)、活性酸素生成量(TBA反応物質量)について検討し、感染初期では、スナネズミ、マウスの両動物において、白血球浸潤とそれに続く酸化ストレス、そしてアポトーシスが起こった。一方、感染後期には、マウスでは、白血球浸潤はピークを越えてもアポトーシスが亢進していたが、スナネズミでは白血球浸潤はさらに亢進し、酸化ストレスも亢進しているにもかかわらず、アポトーシスは著明に抑制されていた。この種による反応性の差異が発癌性に関係するとも考えられた。胃粘膜の酸化ストレスに多大な影響を与える微小循環については、その動態を正立型生体蛍光顕微鏡で観察し、H.pilori及び胃粘膜上皮が同一平面で観察可能とし、世界に先駆けて本菌の初期感染動態を画像化することに成功した。本系では、出血によるへム鉄過剰環境下での、白血球接着、血小板活性化も観察し、へム鉄過剰での微小循環傷害進展も明らかとなった。以上のin vitro,in vivoの検討から、鉄過剰環境を含めた酸化ストレスが、H.pylori感染胃粘膜で惹起され、病態を規定することが明らかとなった。
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[Publications] Suzuki,M.,Suzuki,H.et al.: "Omeprazole attenuates neutrophil-endothelial cell adhesive interaction induced by extracts of Helicobacter pylori"J.Gastroenterol.Hepatol. 14. 27-31 (1999)
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[Publications] Suzuki,H.et al.: "H.Pylori-associated gastric pro-and anti-oxidant formation in Mongolian gerbils"Free Radic.Biol.Med.. 26. 679-684 (1999)
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[Publications] Sakaguchi,A.A.,Suzuki,H. et al: "Increased expression of inducible nitric oxide synthase and peroxynitrite in Helicobacter pylori gastric ulcer"Free Radic.Biol.Med.. 27. 781-789 (1999)
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[Publications] Suzuki,H.et al.: "Ethanol intake preceding H.Pylori inoculation promotes gastric mucosal inflammation in Mongolian gerbils"J.Gastroenterol.Hepatol.. 14. 1062-1069 (1999)
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[Publications] Suzuki,H.et al.: "Polaprezinc,a gastroprotective agent: attenuation of monochloramine-evoked gastric DNA fragmentation"J.Gastroenterol.. 34(Suppl.11). 43-46 (1999)
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[Publications] Suzuki,H.and Ishii,H.: "Role of apoptosis in Helicobacter pylori-associated gastric mucosal injury"J.Gastroenterol.Hepatol.. (2000)