1999 Fiscal Year Annual Research Report
Helicobacter pyloriゲノム解析による病態特異因子の検索
Project/Area Number |
11670555
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
加藤 卓次 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (70145902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 健 福井医科大学, 医学部・附属病院, 講師 (60221040)
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Keywords | Helicobacter pylori / cagA / vacA |
Research Abstract |
Helicobacter pylori(H.pylori)はグラム陰性桿菌で、これまでに、H.pylori感染は慢性萎縮性胃炎、胃癌、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫など多様な疾患に関与していることが認められてきた。このH.pylori感染における疾患の多様性の要因として、H.pylori菌における多様性が考えられている。H.pylor感染の病原因子として細胞空胞化毒素(VacA)と細胞空胞化毒素関連蛋白(CagA)がこれまで主に検討されてきている。欧米ではvacAの遺伝子型で、s1a/m1型は細胞空胞化毒素活性が強く、消化性潰瘍由来株に多く認めらると報告されている。今回polymerase chain reaction(PCR)及びPCR direct sequencingを用いて、日本の株でvacAの遺伝子型を検討したところ、日本では欧米と異なる新たなs1cm/m1型が約80%を占め、この型は萎縮性胃炎や胃癌株に多いことを認めた。また、日本のなかでも地域差が認められ、萎縮性胃炎や胃癌の発症が日本一低い沖縄では欧米に似たvacAの遺伝子型の分布を示し、s1a/m1型が48%、s1c/m1型が40%、s2/m2型が12%認められた。一方、CagAは欧米ではCagA産生株は十二指腸潰瘍や胃癌よりの分離株で多いと報告されている。今回の我々の検討では、日本の株は100%CagA陽性株であった。また、CagAはH.pyloriが胃粘膜上皮細胞に接着すると菌体から上皮細胞へと移動し、上皮細胞内でチロシンリン酸化を受けることが認められた。cagAはH.pyloriのゲノムのpathogenisity island(PAI)内にある遺伝子であり、今後H.pylori感染の病態解明にはPAIが重要であると考えられた。
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