2000 Fiscal Year Annual Research Report
デコリンを用いた肺癌の腫瘍増殖抑制、抗腫瘍免疫増強、血管新生抑制の試み
Project/Area Number |
11670561
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 彰 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (70220861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗像 浩 近畿大学, 医学部, 教授 (90111294)
鳴海 晃 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (30302219)
海老名 雅仁 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (10280885)
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Keywords | デコリン / 肺癌 / 遺伝子治療 / アデノウイルスベクター |
Research Abstract |
背景・目的:デコリン(DC):プロテオグリカンの一つであるデコリン(DC)は、細胞外マトリクスにおいて細胞の接着、移動、増殖において重要な役目を担っている。デコリンは組織ではI型コラーゲン、ファイブロネクチン、TGF-betaなどと結合し、それらの活性を調節している。DCは種瘍の増殖を抑制する:デコリンは様々な上皮系腫瘍において発現が低下しており、デコリンを恒常的に発現するように形質転換した腫瘍細胞は増殖が抑制されることも報告されている。デコリンを用いた癌遺伝子治療:本研究ではデコリンの、より臨床応用を目指した研究を推進する。すなわちin vivoで、デコリンによる癌増殖・転移抑制をめざした遺伝子治療の開発に資することを目的として、デコリンを発現するアデノウイルスベクターを作製し、実験動物に接種した腫瘍へ感染させ、腫瘍の増殖・転移、血管新生、などを検討した。 実験1:デコリン発現ベクターの作製とin vitroにおける検討:(1)山口祐博士(米国バーナム癌研究所)から供与されたヒト・デコリンのcDNAを用い、デコリンを発現する非増殖性のアデノウイルスベクター(Ad-DC)を作製した。(2)ヒトA549肺癌細胞にAd-DCベクターを感染させ、デコリンの発現をノーザンブロッティング法で確認した。(3)腫瘍細胞にAd-DCベクターを感染させて培養したが、コントロール群(Ad-Nullベクター)に比べて有意な腫瘍細胞増殖抑制効果は認められなかった。 実験2:in vivoでのAd-DCベクターによる抗腫瘍効果の検討:ヒト肺癌細胞をマウスに接種し作製した移植腫瘍にAd-DCベクターを直接投与したところ、コントロールベクター(Ad-Null)投与に比べ23.3%の腫瘍増殖抑制が認められたが有意差は認められなかった(p=0.19)。また腫瘍血管新生抑制効果は認められなかった。 考察:今回の実験ではデコリン遺伝子導入による有意な腫瘍増殖抑制効果は認められなかった。今後はさらに異なる腫瘍細胞株などを用い、実験を進める予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 海老名雅仁,鳴海晃,佐藤研 他: "デコリンの肺線維化抑制機能の基礎的研究."厚生省特定疾患 臓器線維症における線維化抑制物質の誘発を活用した治療法開発に関する研究班 平成11年度研究報告書. 39-44 (2000)
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[Publications] 海老名雅仁,清水川稔,鳴海晃 他: "ブレオマイシン肺線維症モデルに対するデコリン遺伝子導入:デコリンによる肺線維症遺伝子治療の臨床応用への可能性の検討"厚生省特定疾患 臓器線維症における線維化抑制物質の誘発を活用した治療法開発に関する研究班 平成11年度研究報告書. 33-38 (2000)