2000 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病におけるケトン体治療に関する基礎的研究
Project/Area Number |
11670625
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中島 健二 鳥取大学, 医学部, 教授 (70144673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹島 多賀夫 鳥取大学, 医学部, 講師 (20206973)
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Keywords | ケトン体 / アミロイドβ蛋白 / 海馬初代培養 / アルツハイマー病実験モデル / エネルギークライシス |
Research Abstract |
我々はラット初代海馬を用いたアミロイドβ蛋白毒性モデルを作成した。胎生18日ラット脳より完全無血清培地を用いて、グリアの混入を排除し、細胞体が重ならない低密度培養を7日間以上行うことに成功した。この状態を神経過疎状態とし、アルツハイマー病実験モデルの初期状態とした。 海馬神経培養において、5μMのAβ1-42の投与はMAP2陽性細胞を優位に減少させ、神経突起の短縮を認めた。Aβ1-42被爆下において、D-β-ヒドロキシ酪酸(DBHB)の投与は、MAP2陽性細胞数を優位に増加させ、神経突起の伸長を促し、Aβ1-42毒性からの神経保護作用を有した。更に、DBHBの投与はコントロールと比して、MAP2陽性細胞数を優位に増加させ、神経突起の伸長を促した事から、成長ホルモン様の効果を有する可能性が考えられた。前頭中隔におけるアセチルコリン作動性細胞の免疫染色は不安定であり、現時点で安定した定量をするには至っていない。 アルツハイマー病患者の脳においてAβ1-42濃度は健常人の6倍であり、Aβ1-42は海馬組織においてτ蛋白キナーゼを活性化することにより細胞内ピルビン酸脱水素酵素(PDH)複合体を不活性化することが知られている。還元型ケトン体であるDBHBは脳に対し正常な基質であり、PDH複合体をバイパスして、直接TCA回路にアセチルCoAを供給し、同時に細胞内還元剤NADHを生成る事から、Aβ1-42による神経毒性から救済するものと考察する。 アルツハイマー病及において、ケトン体が神経保護効果を有することを示した。このことは、ミトコンドリアのエネルギー生成障害が、本疾患の病態生理に大きく関与することを示唆する。以上より、ケトン体がエネルギークライシスに関与する他の神経変性疾患に対しても治療的役割を担う可能性を示唆した。
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