2000 Fiscal Year Annual Research Report
GDNF遺伝子組み込みアデノウイルスベクターを用いたパーキンソン病遺伝子治療の試み
Project/Area Number |
11670628
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
柏原 健一 岡山大学, 医学部・附属病院, 講師 (80204387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 康二 岡山大学, 医学部, 教授 (20212540)
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Keywords | パーキンソン病 / アデノウイルス / 神経栄養因子 / GDNF / IGF-1 / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
昨年度の研究では、アデノウイルスベクターを用いてlacZ遺伝子をラット脳内に注入し、発現される蛋白の発現部位、経時変化を検討した。本年度は、黒質で十分なlacZ遺伝子の発現がみられた条件下で、GDNF遺伝子組み込みアデノウイルスベクターを投与し、6-OHDA毒性に対するドパミンニューロンの保護効果を検討した。また、変性抑制効果のメカニズムを調べ、神経細胞の変性、回復機序を検討する目的で、同じく神経栄養因子であるIGF-1の保護効果を検討した。 実験1:ラットの一側黒質背側に、GDNFまたはLacZ遺伝子を組み込んだアデノウイルス(それぞれAdGDNF、AdLacZ)を注入した。一週間後、6-OHDA8μgを同側内側前脳束に注入した。1週間後、断頭し、黒質のチロシン水酸化酵素(TH)陽性細胞を検出、ドパミンニューロン障害へのGDNF保護作用を検討した。その結果、AdLacZ注入側ではTH陽性細胞数が健側の約10%であるのに比べ、AdGDNF注入側では約40%と、有意に多く残存していた。AdGDNFの注入側では6-OHDAによる黒質ドパミンニューロンの脱落が抑制されたと考えられた。一方、抗GDNF抗体を用い、AdGDNFによるGDNF発現を調べたところ、注入側黒質においてGDNFの発現が確認された。これらのことからAdGDNFの黒質近傍への注入により、黒質でGDNFが産成され、6-OHDAによる黒質ドパミンニューロンの脱落が抑制することが確認された。 実験2:神経栄養因子導入による遺伝子治療の可能性を広げる目的で、IGF-Iの黒質ニューロン保護効果を同様のモデル動物を用い検討した。一側内側前脳束に6-OHDAを注入後、IGF-1を1日あたり1または10μgをミニポンプを用い14日間脳室内に注入した。この後アポモルフィンを投与して行動を観察したところ、IGF-1投与群では用量に比例して過敏行動が生じなくなっていた。黒質のTH陽性ニューロンは同様に脱落していた。本実験条件下ではIGF-1はドパミンニューロンの脱落を防げないが、神経終末での受容体感受性の変化を抑制したと考えられた。
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Research Products
(1 results)