2000 Fiscal Year Annual Research Report
心筋虚血時の細胞内Ca^<2+>代謝の異常に関する研究
Project/Area Number |
11670670
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐藤 洋 浜松医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (30293632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 秀晴 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50135258)
寺田 肇 浜松医科大学, 医学部, 助手 (50252177)
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Keywords | 心筋収縮 / 虚血 / 再灌流障害 / カルシウムイオン / 筋小胞体 / アシドージス / ジギタリス中毒 / 不整脈 |
Research Abstract |
平成11年度:Digitalis中毒、虚血/再灌流障害における細胞膜Na/Ca交換(NCX)を介するCa流入の関与 虚血心筋の再灌流障害において心筋細胞のCa過負荷が報告されており、Ca流入経路としてNCXが注目されている。NCXは、細胞膜の膜電位とNa勾配の変化によりCa排出、流入の両方向性に働く。我々は、(1)ラットの心室筋細胞を用いて、indo-1により細胞収縮とCa transientを同時測定し、最近開発されたNCXのCa流入モードの選択的阻害薬であるKB-R7943が、単離心筋細胞の正常収縮とdigitalis剤による細胞収縮,Ca transientの上昇を抑制しないが、自動収縮能をきたした細胞での拡張期Ca濃度を低下し自動能を消失させる、(2)モルモット右室乳頭筋標本において、低酸素後の再酸素化時に発生する不整脈を予防し、収縮能を改善させる、という結果を得た。NCXを介するCa流入は正常収縮への関与は少ないが、Na負荷時のCa過負荷には重要であり、虚血/再灌流時の不整脈と細胞障害の原因となることが示された。 平成12年度:細胞内acidosisの細胞収縮、Ca transientへの影響 細胞内acidosisは、心筋虚血の一要素であり、細胞のCa代謝に大きく影響すると報告されている。我々は、ラット心室筋細胞において、(1)細胞内acidosisは、収縮蛋白のCa感受性を低下させて収縮力を減弱する、(2)acidosis初期にはSRへのCa取り込み、細胞膜を介するCa排出はともに低下する、(3)acidosisが持続すると、拡張期Ca濃度上昇とCa/Calmodulin kinase IIを介するphospholambanのリン酸によりSRへのCa取り込が再活性化し、Ca transientの振幅が増加して収縮は回復する、という結果を得た。Acidosis中のSRへのCa取り込の再活性化は、虚血中の収縮障害への代償機転であるとともに再灌流時の急速なpH回復による細胞障害の一因となりうることが示された。 今後は、共焦点レーザー顕微鏡によるCa sparkの解析によりSRのCa放出channel活性を評価する。また、虚血/再灌流障害に対するKB-R7943、mitochondria保護薬(diazoxideなど)による治療の可能性を探る予定である。
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[Publications] Hiroshi Watanabe: "Increased cytosolic Ca2+ concentration in endothelial cells by camodulin antagonists."Biochem.Biophys.Res.Commun.. 265. 697-702 (1999)
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[Publications] Takurou Nakamura: "A single cell model of myocardial reperfusion injury : changes in intracellular Na+ and Ca2+ concentrations in guinea pig ventricular myocytes."Mol.Cell.Biochem.. 194. 147-157 (1999)
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[Publications] Hiroshi Satoh: "KB-R7943 block of Ca2+ influx via Na+/Ca2+ exchange does not alter twitches or glycoside inotropy, but prevents Ca2+ overload in rat ventricular myocytes."Circulation. 101. 1441-1446 (2000)
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[Publications] Masaaki Mukai: "Effects of a selective inhibitor of Na+/Ca2+ exchange, KB-R7943, on reoxygenation -induced injuries in guinea pig papillary muscles."J.Cardiovasc. Pharmacol.. 35. 121-128 (2000)
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[Publications] Shibo Sugiyama: "The importance of glycolytically-derived ATP for the Na+/H+ exchange activity in guinea pig ventricular myocytes."Mol.Cell.Biochem.. 217. 153-161 (2001)
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[Publications] 佐藤洋: "心筋細胞の興奮収縮連関におけるNa+/Ca2+交換機構を介するCa2+流入の関与-選択的阻害薬KB-R7943を用いた検討-"心筋の構造と代謝. 22. 223-229 (2000)