2000 Fiscal Year Annual Research Report
冠狭窄による慢性虚血心モデルにおけるリモデリングの発生病態の解明と治療への応用
Project/Area Number |
11670696
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
丸山 幸夫 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90004712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前原 和平 福島県立医科大学, 医学部, 助教授 (90181817)
矢尾板 裕幸 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (50264544)
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Keywords | 虚血性心疾患 / ミトコンドリア / 一酸化窒素 / イオンチャネル |
Research Abstract |
目的:冠動脈近位部に設定した狭窄にもとずく慢性虚血心のラットモデルにおいて、心不全発症の病態を心機能,冠循環,心筋ミトコンドリア呼吸機能の面から明らかにするとともに,虚血時のCa過負荷に関与するイオンチャネル及び一酸化窒素合成酵素(NOS)の制御による薬物治療の可能性を検討した。方法:冠狭窄ラットモデルにおいて,狭窄の24時間以内より以下の連日投薬を開始し,4週間後(一部は12週間後)に心エコーを行った。一部の群ではマイクロスフェアー法で心筋血流を,また、in vitro冠微小循環eNOS活性測定法により冠一酸化窒素合成酵素活性を評価した。1)ミトコンドリアにおけるATP依存性Kチャネルの開口薬であるdiazoxide,2)ATP依存性Kチャネルの遮断薬である5-hydroxydecanoate,3)細胞膜におけるATP依存性Kチャネルの開口薬であるnicorandil,4)Na-H交換系阻害薬であるSMP-300,5)血管内皮型NOS(eNOS)の補酵素であるtetrahydrobiopterin(BH4),6)アンジオテンシン1型受容体拮抗薬であるcandesartan。結果:本モデルでは、candesartanによりリモデリングは抑制された。イオンチャネルを介したdiazoxide及びnicorandilは本虚血心モデルにおいて心筋傷害を軽減せず,心室リモデリングを抑制しなかった。一方,5-hydroxydecanoateは心筋傷害をむしろ増悪させたことより,慢性虚血によりKATPはすでに開口していて,新たに投与した開口薬は心不全抑制効果を発揮しないと考えられた。SMP-300では左室収縮末期径は対照薬群に比して有意に減少し,駆出率も改善した。また,冠狭窄で減少した冠予備能はSMP-300群で改善しておらず,SMP-300による心筋保護効果は直接的に冠循環の改善をかいしたものでないと思われた。一方、BH4は冠eNOS機能を高め、冠予備能を高めるとともに心不全を有意に改善した。結語:慢性虚血心のモデルにおいては,急性虚血の病態に有効とされるKATP開口薬は必ずしも有効ではないが,対照的にNa-H交換系阻害薬は心筋保護効果を発揮し,また,冠eNOSの活性化も慢性虚血性心不全の治療に有効と考えられた。
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