1999 Fiscal Year Annual Research Report
パッチクランプで細胞内記録した延髄交感神経中枢ニューロン電気活動の非線形解析
Project/Area Number |
11670707
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
熊谷 裕生 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (50170048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 友一 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (40286480)
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Keywords | 交感神経中枢ニューロン / 延髄吻側腹外側領域 / パッチクランプ / 高血圧の発症機序 / 摘出脳幹-脊髄標本 / 非線形解析 / 相互情報量 / スパイク相関解析法 |
Research Abstract |
高血圧の発症の機序を調べるために、交感神経中枢である延髄吻側腹外側領域(RVLM)ニューロンの電気的活動亢進や、RVLMから脊髄中間外側核(IML)ヘの情報伝達の異常を検討している。正常血圧ラット(WKY)と本態性高血圧症モデルである高血圧自然発症ラット(SHR)を用い、血圧の等しい新生児期、および血圧の差が生じる生後6週の、RVLMとIMLニューロンの細胞内電位の電気生理学的性質を比較した。ラット摘出脳幹-脊髄標本を作成し、アイソレータにパッチピペットを取りつけ、マイクロマニピュレーターを用いて操作する。RVLMおよびIMLニューロンの膜電位変化を膜電位固定用増幅器を通じてとらえ、相互情報量(mutual information)法で非線形解析した。主な結果を以下に記す。 (1)WKYとSHRいずれのRVLMニューロンも、発火パターンから規則発火型、不規則発火型、サイレント型の3種類に分類できた。静止膜電位は、規則発火型も不規則型もSHRは-49mVで、WKYの-54mVよりも浅かった。発火頻度は、規則発火型でWKY3.6Hz、SHR5.3Hzであり、不規則発火型でWKY1.3Hz、SHR2.2Hzで、SHRの方が有意に高頻度であった。それにもかかわらずなぜ血圧が等しいのかを検討している。(2)昇圧物質に対する反応性の違いをみるために、6μMのアンジオテンシンIIで標本を灌流すると、WKYのRVLMニューロンは1.2mV脱分極したが、SHRでは8.9mVと著明に脱分極し、発火頻度も増加した。(3)アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬であるカンデサルタン(0.06μM)で灌流すると、WKYでもSHRでも静止膜電位から3mV過分極し、有意な差を認めなかった。(4)「RVLMニューロンの細胞外電位」と「交感神経の出力であるIMLニューロンの細胞内電位(パッチクランプ)」の同時記録に世界で初めて成功した。スパイク相関解析法でcorrelogramを作成したところ強い相関を示すnarrow bandを認めた。同時記録より、RVLMニューロンの(自発)発火から45ミリ秒遅れて、IMLニューロンに発火やEPSPを認めた。現在RVLMニューロンとIMLとの関係を非線形解析し、RVLMニューロンの活動亢進が本当に末梢交感神経活動の亢進、血圧上昇に結びつくかを検討している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Oshima N, Kumagai H, Matsuura T,: "Three types of putative presympathetic neurous in rostial ventrolateral medulla"Journal of Autonowic Nervous System. 77巻. (2000)
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[Publications] 大島直紀、熊谷裕生、松浦友一 ほか: "延髄交感神経中枢ニューロンのパッチクランプを用いた検討"循環器科. 46. 453-460 (1999)
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[Publications] 熊谷裕生、大島直紀、猿田享男: "交感神経系、圧受容器反射と高血圧"医学のあゆみ. 189(no9). 583-588 (1999)
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[Publications] 松浦友一、熊谷裕生、猿田享男 ほか: "高血圧自然発症ラットにおける延髄吻側腹外側の交感神経中枢ニューロンの膜電位およびアンジオテンシンIIに対する反応性の検討"日本内分泌学会雑誌. 75. 437 (1999)
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[Publications] 佐方克史、熊谷裕生、松浦友一 ほか: "スペクトル解析より分析した腎交感神経活動と血圧および腎血流量との相関は、正常血圧と高血圧ラットとで異なる。"血圧. 7(印刷中). (2000)
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[Publications] 西澤雅彦、熊谷裕生、猿田享男 ほか: "心筋梗塞後ラットの動脈圧受容器反射に対するアンジオテンシンII受容体拮坑薬とACE阻害薬の効果の比較"血圧. 6. 574-577 (1999)