2000 Fiscal Year Annual Research Report
新生児期の尿素による尿濃縮機構の成熟に関する新しい仮説の証明
Project/Area Number |
11670734
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
根東 義明 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (00221250)
|
Keywords | 新生児 / 尿濃縮 / 質的転換 / 腎髄質部 |
Research Abstract |
腎髄質内層のヘンレループおよび集合尿細管のNaCl輸送能の経時的変化を明らかにするため、倒立顕微鏡下に尿細管各部を微小灌流し、自発的経上皮電位(以下Vtと略)と経上皮NaCl、NaないしCl拡散電位を測定した。 ヘンレの細い下行脚(以下tDLと略)では、出生前後のすべての期間にわたって、自発的経上皮電位は観察されず、能動的なNaClの再吸収の存在は示唆されなかった。 細いヘンレの上行脚(以下tALと略)では、出生直前より管腔内正で15mV前後のVtが存在し、生後1日でも14mV前後だった。tALのVtはその後急速に低下し、日齢5でほぼ消失した。この管腔側正のVtは、血液側に加えたouabain、管腔側に加えたbumetanideないしbariumにより強く抑制されたため、太いヘンレの上行脚と同様の能動的NaCl再吸収機序が出生前後のtALに存在し、出生後に消失していくとが考えられた。 集合尿細管(以下IMCDと略)では、管腔内負-50mV前後の大きなVtが出生前より存在し、日齢1にも観察され、日齢10には消失した。この電位は、管腔側に加えた10-4M amilorideにより完全に抑制され、皮質部集合尿細管に本来みられる能動的NaCl再吸収機序と同じものであると考えられた。 tALのPureaは、日齢1で成熟ラットの3分の1で、その後徐々に増加した。tDLでは、やはりPureaは日齢1で12x10-5cm/s前後を推移した。 IMCDのPureaは、日齢1でAVPの非存在下では4x10-5cm/sという低値を示し、AVPによる促進はほとんど見られなかった。 単離尿細管機能の検討結果から、日齢7に至るまでの新生児ラットでは、腎髄質部への能動的NaCl蓄積機構が機能しており、尿素を利用した尿濃縮機構が完成しておらず、ヘンレループでは水透過性が上行脚のみならず下行脚でも著しく低く、成熟ラットとは大きく異なる尿濃縮システムが機能していることが示唆された。
|