1999 Fiscal Year Annual Research Report
神経親和性ムンプスウイルスによる脳形成異常の発生病理
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11670757
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
高野 知行 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (80236249)
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Keywords | 脳形成異常 / 裂脳症 / ウイルス感染 / ムンプスウイルス |
Research Abstract |
発育期脳へのウイルス感染により惹起される脳形成異常の機序を解析するため、シリアンハムスターの中枢神経組織に親和性を有するKilham株のムンプスウイルスを、胎生12日目の子宮の各胎盤内に接触し、得られた出生ハムスターの脳組織を病理学的に検索した。 1.virusおよびvimentin免疫組織化学:ウイルス抗原は脳室周囲のgerminal cellに顆粒状の蛍光として観察された。同一切片のvimentin染色では、脳室面から脳表に達する多数のradial glial fiberがvimentin陽性であった。ウイルス抗原はgerminal cell以外に皮質や皮質下の中間層にも局所的に強い蛍光の集積が観察され、これらには脳室面から脳表に達する細い突起を多数ともなっていた。これらウイルス抗原陽性構造は同時にvimentinの免疫組織活性陽性であり、radial glial fiberから成ることが示された。また、皮質下の中間層に観察されたウイルス抗原陽性細胞も同様にvimentin陽性のradial gliaであった。 2.組織学的変化:生後2日目では、両側の大脳皮質およびgerminal layerに出血と壊死像が広範囲に認められた。側脳室は過剰なgerminal cellにより背側部と腹側部に離断され、また、側脳室の腹側末端部より脳表にまで達するcleftを形成したものも観察された。このcleftの周囲はgerminal cellの層により覆われたいた。生後4日目では、大脳皮質の主としてfrontalおよびparietal領域に、広範囲な層状の壊死像が認められた。一部の脳表には壊死組織をともなった小さな脳溝の形成が観察された。この生後4日目でも同様に皮質の出血や壊死以外に、側脳室より脳表に達するcleft形成が観察された。海馬を通る断面では側脳室は線状となって脳表に達し、また、皮質neuronの構築異常にともなって第3脳室腔は脳表近傍にまで達し、同様なcleftを形成していた。生後7および10日目まで生存し得た検体はわずかで、皮質の出血および脳室拡大が主な所見であった。 以上より(1)microsulciの形成やcerebral mantleに認められたcleftの形成は非常に特徴的で、臨床的には多少脳回症や裂脳症に極めて類似していた。(2)感染によるneuronの壊死およびradial glial fiberの障害が、本実験モデルにおけるmicrosulciやcleft形成の一因になったものと推察された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Tomoyuki Takano: "Experimental Schizencephaly induced by Kilham strain of mumps virus: pathogenesis of cleft formation"Neuroreport. 10. 3149-3154 (1999)
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[Publications] Tomoyuki Takano: "Experimental mumps virus-induced hydrocephalus: viral neurotropism and neuronal maturity"Neuroreport. 10. 2215-2221 (1999)