2000 Fiscal Year Annual Research Report
難治性老年期うつ病の総合的病態解析と治療戦略の確立
Project/Area Number |
11670926
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
粟田 主一 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (90232082)
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Keywords | 難治性うつ病 / 老年期 / SPECT / 電気けいれん療法 / 薬物治療不耐性 / 再燃脆弱性 / 局所脳血液パターン / 継続 / 維持治療 |
Research Abstract |
薬物治療抵抗性または不耐性のためにECTの適応となった初老期・老年期うつ病連続症例(N=16,M/F=6/10,49〜74歳、平均63.2±7.1歳、DSM-IVの大うつ病エピソード)に対して、ECT前後の臨床症状をハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)でモニターし、ECTの反応率とECT後6ヶ月の再燃率を算出した。ECT前後のHAM-D平均改善率は75%、「HAM-D改善率50%以上かつ12点以下が少なくとも1週間持続」を基準とする反応率は81%、「反応例においてECT後の経過中にHAM-D17点以上が1週間以上持続」を基準とする再燃率は46%であった。薬物治療が困難な初老期・老年期うつ病において、ECTは反応率80%台の高い短期的治療効果を発揮するが、ECT後6ヶ月間の再燃率は約50%であり、ECTを用いた治療戦略の開発には、ECT後の易再燃性の病態解明と再燃予防のための継続/維持治療の開発が重要である. ^<99m>Tc-HMPAO SPECTを用いて,ECT反応群9例の局所脳血流動態の変化を縦断的に解析したところ,1)ECT前の患者群には,小脳に対する相対的な大脳平均血流量の低下とともに,全脳に対する両側吻側前部帯状回・梁下回・内側及び後部眼窩回,右島皮質・中前頭回後部に相対的局所脳血流量低下が認められたが,2)ECT後には,臨床症状の改善とともに小脳に対する大脳平均血流量が正常化し,この正常化がECT終了後3ヶ月(非再燃群では6ヶ月)間持続した.しかし,3)全脳に対する両側吻側前部帯状回・梁下回・内側及び後部眼窩回,右島皮質・中前頭回後部の局所脳血流量低下はECT終了後も持続的に認められた.難治性老年期うつ病患者に見られる大脳平均血流量の低下は状態依存性指標である可能性があるが,paralimbic領域の血流低下パターンは再燃脆弱性に関連する素因関連性指標である可能性が示唆された.
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Research Products
(13 results)
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[Publications] Awata S.: "Vulnerability of late-life depression : As viewd from the effect of electroconvulsive therapy on regional cerebral blood flow."Psychiatry Clin.Neurosci.. 53. S86 (1999)
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[Publications] Shen H.Awata S, et al.: "The effect of ECT on platelet 3H-paroxetine binding in antidepressant-resistant depression."Psychiatry Clin.Neurosci.. 53. S110 (1999)
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[Publications] 沈昊偉,粟田主一 ほか: "老年期治療抵抗性うつ病に対する無けいれん電撃療法の奏効機序に関する研究(2)治療前後の血小板[3H]paroxetine結合の変化."精神神経系薬物療法研究基金研究年報. 31. 118-124 (1999)
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[Publications] 鈴木一正,粟田主一 ほか: "m-ECT(修正電気けいれん療法)後に繰り返し再燃するうつ病に継続ECTとlithium carbonateによる維持薬物治療が有効であった一例."精神科治療学. 15. 647-653 (2000)
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[Publications] 粟田主一 ほか: "電気けいれん療法後のうつ病の再燃脆弱性と局所脳血流動態の変化."精神神経系薬物療法研究基金研究年報. 32. 266-273 (2000)
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[Publications] 粟田主一: "老年期のうつ病と幻覚妄想病の治療とケア"日本老年医学会雑誌. 37. 882-884 (2000)
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[Publications] Suzuki K,Awata S, et al.: "Three cases treated by continuation/maintenance electroconvulsive therapy."Psychiatry Clin.Neurosci.. 54. S17 (2000)
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[Publications] Shen H,Awata S, et al.: "Electroconvulsive shock regulates serotonin transporter mRNA expression in rat raphe nucleus."Psychiatry Clin.Neurosci.. 54. S34 (2000)
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[Publications] 沈昊偉,粟田主一 ほか: "電気けいれんショックによるラット脳内セロトニントランスポーター発現の変化"精神神経系薬物療法研究基金研究年報. 32(印刷中). (2001)
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[Publications] 鈴木一正,粟田主一 ほか: "緊張病症候群を呈する遅発性精神病の一例."精神医学. 43(印刷中). (2001)
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[Publications] Shen H,Awata S, et al.: "ECS Regulates Serotonin Transporter mRNA Expression in Rat Raphe Nucleus."Psychiatry Clin.Neurosci.. 55(in press). (2001)
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[Publications] 島袋仁,粟田主一 ほか: "脳波上三相波を示したセロトニン症候群の一例"臨床精神医学. 30(印刷中). (2001)
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[Publications] 粟田主一: "Central Nervous System Today-3.感情障害、不安障害、睡眠障害、分裂病-基礎から臨床まで.(加藤進昌,樋口輝彦編)"難治性感情障害の治療におけるECT. 7-11 (2000)