1999 Fiscal Year Annual Research Report
穿通経路障害後の海馬にみられるアセチルコリン線維増生機構の解明
Project/Area Number |
11670928
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水上 勝義 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (20229686)
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Keywords | 海馬 / 内嗅領皮質 / Perforant Pathway / ユビキチン |
Research Abstract |
内嗅領皮質から海馬に投射するグルタミン作動性投射経路は、穿通経路(perforant pathway:PP)と呼ばれ、記憶や認知機能に重要な役割を担っていること、さらにはアルツハイマー病においてもっとも早期に障害されることが知られている。PPを実験的に障害させると、投射先のかいばで様々な神経可塑性の変化が生じることが報告されているが、その基盤となっている機序については未だ明らかではない。今回は、神経可塑性の変化を発現させる神経細胞にどのような変化が生じているかをストレス蛋白の一種であるユビキチンに対する特異抗体を用いて免役組織化学的に検討した。250gの雄ラットの右PPを深部麻酔下で吸引除去した。手術後1日、3日、7日、14日、30日に灌流固定し、40マイクロ厚の切片を作成し、免役染色した。ユビキチンの免疫反応は術後1日で広範に低下した。3日後、染色性は介在神経細胞やCA4のmossy cellで回復したが、歯状回の顆粒細胞やCA1の錐体細胞では染色性はみられず、CA3の錐体細胞では未だ染色性は減弱していた。術後7日には、上記の細胞の免疫反応性はすべて回復した。以上より、PP障害後の海馬の可塑性の変化にユビキチンシステムが関与している可能性が示唆された。今回の抗体はfreeのユビキチンを認識する抗体であるため、PP障害により、投射先の神経細胞内でグルタミン酸入力の急激な低下というストレスに対し、ユビキチンシステムが動員され、freeのユビキチンが結合型のユビキチンに変換された結果を示すものと考えられた。
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