2000 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病の痴呆症状に関する臨床病理的研究:3次元画像解析装置を用いた海馬病変の検討
Project/Area Number |
11670938
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Research Institution | FUKUI MEDICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
福谷 祐賢 福井医科大学, 医学部, 助教授 (10273004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 一夫 福井医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (50262621)
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Keywords | アルツハイマー病 / 海馬皮質 / 形態計測 / 神経細胞死 / 神経原線維変化 / β-アミロイド / 臨床病理学 |
Research Abstract |
本研究の目的はアルツハイマー病にみられる記憶障害を主とする痴呆症状の成因の解明であり、痴呆の程度や罹病期間の異なるアルツハイマー病脳の海馬皮質病変を形態計測学に検討し、その臨床病理学的関連を明らかにすることである。 平成12年度の研究実施事項:平成11年度に対象とした痴呆の罹病期間の異なるアルツハイマー病22例と対照老人6例の剖検脳のうち、予備的に何例かの海馬標本を用い、抗βアミロイド抗体を用いて免疫染色を行った。対照例の海馬皮質では老人斑は全くみられず、アルツハイマー病では、海馬近傍の側頭葉皮質と比べ、海馬CA1や内嗅皮質においても、老人斑の密度は低く、その分布が疎らであった。また、いくつかの亜野(CA2,CA3,Parasubiculum)においては全く存在しない症例もみられた。従って、前年度において神経細胞や神経原線維変化:NFTの計測で行ったような同様の連続視野での計測手法は困難で、罹病期間との定量的な関連の評価は行えなかったが、海馬皮質では老人斑と罹病期間との相関は乏しいと推測された。そこで、本年度も前年度に引き続き、海馬での神経細胞の脱落やNFT形成を詳細に解析、検討することとした。 結果:アルツハイマー病群では対照例と比べ、海馬各部位で神経細胞数の有意な減少がみられ、細胞内、外のNFT数の有意な増加がみられた。アルツハイマー病群では海馬皮質、とくにCA1と内嗅皮質において、神経細胞密度と細胞外NFT数に強い相関がみられ、また、これらの両部位で痴呆の罹病期間と神経細胞数との間で有意な負の相関が、罹病期間と細胞外NFT数との間で有意な正の相関がみられた。 考察:アルツハイマー病の海馬皮質のうち、記憶機能を司る最も重要な部位と考えられているCA1と内嗅皮質においては、痴呆の重症度を間接的に反映すると考えられる罹病期間が長くなるにつれて、神経原線維変化形成およびそれに関連した神経細胞の脱落が高度であった。従って、CA1と内嗅皮質におけるこれらの神経病理学的変化が記憶障害を主とするアルツハイマー病の痴呆症状の病理学的背景であることが明らかとなった。
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