モデル動物の自発活動,ACTHおよびTHmRNAをマーカーにしたうつ病治療の研究-CRF結合蛋白,アルファヘリカルCRFおよびイミプラミレの効果について-

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11670940
• Research Institution: Mie University
• Principal Investigator: 北山 功 三重大学, 医学部, 助教授 (70024784)
• Keywords: うつ病モデル動物 / 自発活動 / ACTH / コルチコステロン / チロシン水酸化酵素mRNA / CRF / アルファヘリカルCRF / アストレッシン

Research Abstract

平成12年度は、うつ病モデルラットの脳内コルチコトロピン放出ホルモン(CRF)拮抗薬を投与すると、視床下部-下垂体-副腎(H-P-A)系と青斑核ノルアドレナリン(NA)系の機能亢進が抑制され、うつ状態(無動)が改善するか検討した。また、今回CRFそのものの作用も同時に確認した。ラットに強制歩行ストレスを加え、回転自発活動回復率が10%以下になるうつ病モデルを作成した。このモデル動物を4群(各n=10)に分けて、3日間、毎日午前9時に麻酔下で、1μlの生理食塩水(生食)、CRF(ng)アルファヘリカル(αh)CRF(ng)、アストレッシン(ng)を両側の青斑核に注入した。その3日間における自発活動は、生食投与群でも低くなったが、CRF投与群ではこれより有意に高くなり、αhCRF投与群とアストレッシン投与群では低くなった。しかし、2週間後にはこれらが逆転した。投与最終日の翌日に各群5匹を断頭、採血し、ACTHとコルチコステロンを測定した結果、両者ともCRF投与群では生食投与群より有意に高値であり、αhCRF投与群とアストレッシン投与群では低値であった。脳の青斑核(LC)におけるチロシン水酸化酵素(TH)mRNAをin situ hybridization法で染色、画像定量した結果、発現量はCRF投与群で生食投与群より有意に増加し、αhCRF投与群とアストレッシン投与群で有意に低下したが、2週間後には逆転した。以上の所見から、CRF拮抗薬は、ストレスによって活性化されたNA合成機能を、抗うつ薬投与の場合と同様に低下させ、一時的に自発活動量も低下させるが、LCニューロンが休息した結果として、その後、このニューロンのNA合成および分泌能が高まり、自発活動量も増加するのではないかと推測される。