2000 Fiscal Year Annual Research Report
複数の神経伝達物質遊離作用を指標にした抗精神病薬の分類に関する研究
Project/Area Number |
11670949
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒木 俊秀 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (60215093)
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Keywords | 精神分裂病 / 非定型抗精神病薬 / セロトニン(5-HT)2A受容体 / 前頭前野皮質 / グルタミン酸 / ドーパミン / 最初期遺伝子 / 脳内微小透析法 |
Research Abstract |
1、前年度までの研究において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた複数の神経伝達物質(ドーパミン、セロトニン、グルタミン酸)の同時一斉高感度測定法を確立した。これにより、微小脳内透析法による非拘束、自由行動下のラット脳内各部位における複数の神経伝達物質の細胞外レベルをリアルタイムに測定することが可能となった。さらに最初期遺伝子arcのmRNAレベルをRT-PCR法により測定することにより、最初期遺伝子発現に対する抗精神病薬の作用も検討した。以上の測定系を用いて、今年度は、以下のような研究成果を得た。 2、幻覚剤フェンサイクリジン(PCP)をラットに急性投与して精神分裂病の動物モデルを作成した。その前頭前野皮質ではPCPによりarcが誘導されるが、これを定型抗精神病薬ハロペリドールは影響を与えないが、非定型抗精神病薬クロザピン、リスペリドン、およびオランザピンは有意に抑制した。しかしながら、この非定型抗精神病薬の作用は、PCPによる前頭前野皮質のドーパミン遊離作用の亢進に対する同薬物の影響とは相関していなかった。 3、前頭前野皮質において高K^+により励起された細胞外グルタミン酸レベルに対する抗精神病薬の影響を検討したところ、 クロザピンは有意に抑制したが、リスペリドン、およびハロペリドールは有意の影響を与えなかった。以上の所見は、クロザピンとリスペリドンはグルタミン酸ニューロン活動に対して作用が異なることを示唆しており、各々の臨床的特性の相違を反映している可能性がある。現在、その他の抗精神病薬についても同様の検討を行っている。 4、本研究の最終年度では、これまで得られた実験結果をもとに、各種抗精神病薬の前頭前野皮質におけるドーパミン、セロトニン、およびグルタミン酸遊離作用を指標とした薬物の分類を統計学的解析法を用いて行い、薬物の臨床的特性との相関を検討する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kuroki,T. et al.: "R(+)-OH-DPAT, a selective 5-HT_<1A> receptor agonist, attenuated amphetamine-induced dopamine synthesis in rat striatum, but not nucleus accumbens or medial prefrontal cortex."Brain Research. 872巻. 204-207 (2000)
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[Publications] Nakahara,T. et al.: "Effect of atypical antipsychotics on phencyclidine-induced expression of arc in rat brain."Neuroreport. 11巻. 551-555 (2000)
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[Publications] Nakahara,T. et al.: "Long-term treatment with haloperidol decreases the mRNA levels of complexin I, but not complexin II, in rat prefrontal cortex, nucleus accumbens and ventral tegmental area."Neuroscience Letter. 290巻. 29-32 (2000)
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[Publications] 黒木俊秀,田代信維: "賦活・抗うつ作用を発揮する抗精神病薬スルピリドとリスペリドンの薬理."Pharma Medica. 18巻. 149-157 (2000)
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[Publications] 黒木俊秀: "前頭前野皮質グルタミン酸ニューロン系を標的とする非定型抗精神病薬の薬理研究"精神薬療研究年報. (印刷中).
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[Publications] Kajihata,T. et al.: "Effects of phencyclidine and DOI on high K^+-evoked extracellular glutamate levels and the immediate-early gene arc expression in rat prefrontal cortex."Monitoring Molecules in Neuroscience 2001. (in press).