2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11670959
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
大西 秀樹 横浜市立大学, 医学部, 講師 (30275028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 芳輝 横浜市立大学, 医学部・附属病院, 講師 (70220415)
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Keywords | ミトコンドリア遺伝子 / 糖尿病 / 痴呆 |
Research Abstract |
本年度は、ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者の精神神経学的な精査および臨床検査を施行し、経時的な観察のなかで中枢神経障害が進行する症例と中枢神経障害を有しない症例を比較検討した。ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者を6年間追跡調査した結果、新しく精神神経学的所見を呈した患者は発端者以外には現れなかった。うつ病を呈した患者はその後寛解状態が継続しており、小脳萎縮も進行していない。しかしながら、脳卒中様発作を呈した症例は、大脳、小脳萎縮が進行しており、痴呆症状が発現した。経時的な臨床観察の結果として、中枢神経障害が進行する症例では、(1)乳酸、ピルビン酸が経時的に上昇する、(2)難聴の進行が急速であることが、(3)臨床的には痴呆、失語症を呈する、(4)画像所見では、梗塞様の所見に加え、大脳皮質の萎縮が加わる、(5)糖尿病、難聴の発生率が高いことが判明した。中枢神経障害を呈さない症例でも難聴、糖尿病を合併するが、乳酸、ピルビン酸は経時的変化を呈さないことが判明した。このことは、患者の予後を予測する上で有用と考えられた。 また、患者の臨床観察を行うなかで、多毛の患者が多いことに気づき、皮膚所見を検討したところ、中枢神経障害を呈する患者では、全員に多毛を認めた。多毛を呈している患者の皮膚生検を行ったところ、立毛筋に異常ミトコンドリアの集積を認め、また汗腺細胞およびpericyteにも同様の所見を認めた。このことから、ミトコンドリア遺伝子異常が発汗に及ぼす影響の可能性を考え、発汗テストを施行したところ、発汗の遅れがみられた。立毛筋、および汗腺は人体の体温調節に重要な働きを有している器官であることから、ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者では体温調節障害が生じる可能性がある。
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