2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11670959
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
山田 芳輝 横浜市立大学, 医学部・附属病院, 助教授 (70220415)
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Keywords | ミトコンドリア遺伝子 / 糖尿病 / 痴呆 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者の精神神経学的な精査および臨床検査を施行し、経時的な観察の中で中枢神経障害が進行する症例と中枢神経障害を有しない症例をさらに比較検討した。ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者を7年間追跡調査した結果、新しく精神神経学的所見を呈した患者は発端者以外には現れなかった。新たな発端者を得てこの症例の臨床観察および検査を行い、これまでの研究の対象にした症例との比較検討を行った。 うつ病を呈した患者はその後も寛解状態が継続しており、小脳障害も目立っていない。しかしながら、脳卒中様発作を起こした症例は、さらに大脳・小脳萎縮が進行し、痴呆症状が悪化した。経時的な臨床観察の結果として、中枢神経障害が進行する症例では、(1)乳酸、ピルビン酸が経時的に上昇する、(2)難聴の進行が急速である、(3)痴呆、失語症が比較的早期に出現する、(4)画像所見では、脳梗塞様の所見に加え、大脳皮質の萎縮が加わる、(5)糖尿病、難聴の発生率が高いことが判明した。中枢神経障害を呈さない症例でも難聴、糖尿病を合併するが、乳酸値、ピルビン酸値は経時的変化に乏しかった。今回新たに加わった症例は、痴呆・失語などは認めないものの、難聴、糖尿病が比較的急速に進行し、抑うつ状態が持続し、乳酸・ピルビン酸値が上昇傾向にある。このことはわれわれのこれまでの研究からは、中枢神経障害が進行しやすいを示唆するものと考えられるが、今後の経過のなかで明らかになると思われる。 また、老人または老年痴呆患者で見られることが知られているミトコンドリア遺伝子の欠失は一部のミトコンドリア遺伝子異常症患者でも見られることがあるが一定の傾向を指摘することは難しく、年齢や臨床経過など様々な要因が影響すると考えられるため、更に分析して検討を加える必要がある。
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