2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11670970
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Research Institution | Hyogo College of Medicine |
Principal Investigator |
植木 昭紀 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30203425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真城 英孝 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (90330456)
三和 千徳 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (60309458)
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Keywords | アルツハイマー病 / 内嗅皮質 / 海馬 / 記憶障害 / 脳内微量透析法 / アセチルコリン / アセチルコリンエステラーゼ / シナプトフィジン |
Research Abstract |
内嗅皮質(entorhinal cortex)は、アルツハイマー病の早期から神経病理学的変化が出現する部位であるとともに、記憶と最も関係の深い海馬と神経解剖学的に線維連絡があり、アルツハイマー病の内嗅皮質病変がアルツハイマー病の中核症状である記憶障害の一因をなしている可能性が推察されている。すでに、両側内嗅皮質破壊ラットにおいて内嗅皮質の破壊が中隔野を介さず、直接、海馬の神経回路に影響し、記憶に関連するアセチルコリン系神経伝達機能を障害し、学習記憶障害が起こることを確認している。そこで内嗅皮質破壊ラットを12カ月間生存させ、アセチルコリンエステラーゼおよびシナプトフィジンに関する染色を行い内嗅皮質破壊後の長期にわたる海馬への影響を組織学的に検討した。アセチルコリンエステラーゼ陽性線維の減少は12カ月後でも3カ月後と同程度にとどまったが、シナプトフィジン陽性物質の減少は12カ月後の方が3カ月後より高度であった。内嗅皮質破壊による海馬のアセチルコリン作動性障害が長期にわたり続くことによって、シナプス機能にも障害が進行していくことが明らかとなった。このことはアルツハイマー病において内嗅皮質に生ずる神経病理学的変化が海馬の記憶神経機構に影響し記憶障害が惹起されることをあらわしており、内嗅皮質破壊ラットがアルツハイマー病の記憶障害モデルとなる可能性を示唆している。本研究から得られた結果は、アルツハイマー病における記憶障害の発現機序を理解するだけではなく、治療薬開発のための新しいアルツハイマー病の病態モデルを作成する上でも、大きな手掛かりを与えるものと思われる。
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