Research Abstract |
WT1遺伝子は,癌抑制遺伝子として認識されているが,我々のグループは,白血病で特異的に高発現していることをつきとめ,その発現をPCRで定量することにより,微小残存白血病(MRD)を定量できる系を開発した。 一方,白血病の1部の症例では,bcr-abl,AML1-ETOなどの白血病特異的なキメラ遺伝子発現が存在し,それを利用して,MRDの定量が可能である。キメラ遺伝子発現を有する症例で,WT1とキメラ遺伝子の発現を同一検体で測定することにより,MRDを多角的に評価するとともに,WT1 assayの位置付けをより明確にしたい。APLでATRAで分化誘導をかけた時,白血病細胞の減少は,キメラ遺伝子(PML-RARA)の減少に相関していたが,WT1は前2者よりも早く減少を示した。白血病の再発時に,白血病細胞当たりのWT1の発現量が増加するという研究データと組み合わせると,WT1発現は,他のキメラ遺伝子による定量と異なり,白血病細胞の質(増殖力)x量を反映しているもとの考えられる。 骨髄移植を受けた60名の患者で,定期的に骨髄検体でWT1発現をモニタリングした。骨髄移植後は,正常造血に基づくWT1発現が低下するため,移植後3-6ヶ月間はMRDの検体感度が10倍上がることが明らかになった。また,移植後の再発症例の検討では,患者固有のdoubling timeにより,白血病が増加すること,また,この際,他のキメラ遺伝子の上昇と並行して,WT1が上昇することを明らかにした。現在,移植後,再発した患者と寛解を維持している患者で,WT1の変動patternを詳細に比較することにより,再発の早期診断がどこまで可能かを解析中である。
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