1999 Fiscal Year Annual Research Report
受容体チロキシンキナーゼのシグナル伝達におけるCblの機能の解明
Project/Area Number |
11671088
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡林 克典 神戸大学, 医学部・附属病院, 講師 (10233363)
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Keywords | Cbl / PI-3キナーゼ / Akt / apoptosis |
Research Abstract |
受容体チロシンキナーゼのシグナル蛋白の一つであるCblは、癌化能をもたない細胞質に局在する蛋白で、上皮増殖因子(EGF)受容体からのシグナル伝達に対し抑制的に作用することが示されている。Cblにはホスホイノシタイド(PI)-3キナーゼ、Grb2、14-3-3、ユビキチンといった蛋白が結合することが知られているが、Cblに結合するPI-3キナーゼの下流のシグナリングについては明らかでない。本研究では、野生型およびPI-3キナーゼ結合部位を欠失させた改変型Cblをアデノウイルスベクターを用いて線維芽細胞に発現させ、EGF刺激に対する抗アポトーシス作用等の生物学的反応の変化を検討した。Cbl内のPI-3キナーゼの結合部位は主として734位のチロシンであるが、371位のチロシンにも若干結合する。この両者の結合部位を同時に改変すると共沈するPI-3キナーゼ活性は完全になくなった。野生型Cblの過剰発現によってEGF刺激に対するEGF受容体の自己リン酸化、MAPキナーゼおよびAktの活性化は低下し、改変型Cblの過剰発現によりこれらはさらに低下した。紫外線照射によるアポトーシス誘導に対するEGFの抑制効果は野生型Cblの過剰発現によって影響を受けなかったが、改変型Cblの過剰発現によって失われた。従って、CblはEGF受容体からの増殖シグナル伝達に対し抑制的に作用するが、Cblを介するPI-3キナーゼのシグナリングの遮断によりこの抑制作用は増強したことより、PI-3キナーゼの結合はCblの抑制作用に関与しないこと、およびCblを介するPI-3キナーゼのシグナリングは抗アポトーシス作用を担うことが明らかになった。
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