1999 Fiscal Year Annual Research Report
膵β細胞に発現する脂質・アミノ酸反応性遺伝子の同定とその病態生理学的意義の解明
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11671109
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
安田 和基 千葉大学, 医学部, 助教授 (80311611)
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Keywords | 膵β細胞 / 脂肪酸 / グルタミン酸脱水素酵素 |
Research Abstract |
まず脂肪酸輸送タンパク(FATP)について膵β細胞での発現を検討し、FATP4が主なサブタイプで、他にFATP1及び2が発現することを示した。このパターンは、培養グルコース濃度の変化や脂肪酸刺激によっても明らかな変化がなかった。膵と発生学的に近縁な小腸での主要サブタイプもFATP4と報告されており、栄養素と消化吸収器官との関連から興味深い。次にアシルCoA結合タンパク(ACBP/DBI)について、既知のアシルCoA結合部位のアミノ酸配列をもとにdegenerateオリゴを作成してRT-PCRを行い、膵β細胞に発現する新規のサブタイプのクローニングを試みたが、得られたものはすべて既知のACBPであった。膵β細胞で脂肪酸に反応して発現が変化する遺伝子群を系統的に調べるため、培養細胞(βHC9細胞)を0.3μM、3μMのパルミチン酸で48時間培養した後RNAを抽出した。現在このRNAを用いてデファレンシャルディスプレー(DD)法を行い、発現に差のあるバンドを切り出して遺伝子の同定を進めている。 アミノ酸代謝の重要なステップをになうグルタミン酸脱水素酵素(以下GLUD1)の異常により新生児の高インスリン血性低血糖症(PHHI:Persistent hyperinsulinemic hypoglycemia of infancy)を生じた症例を同定した。本酵素異常は世界で10例程度しか報告がないが、切除膵の組織学的検討を行い、膵内分泌細胞のびまん性増殖がみられることを明らかにした。βHC9細胞に、GLUD1および変異GLUD1のcDNAを一過性あるいは恒常的に過剰発現させたが、グルコース、ロイシンなどの代謝性刺激に対するインスリン分泌には明らかな影響を認めなかった。しかし膵β細胞におけるアミノ酸代謝の重要性を示すものと考え、現在さらにアンチセンスを過剰発現させ、その影響を検討している。
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